こうして僕らは、夢を見る
「ねえ朔君?」
ふと私は視線をコートから朔君に移した。それは司くんに寄って集り打ち合いを申し込む四人を見ているうちに頭上にクエッションが浮上したから。
「何で皆はそんなに司くんと遣りたがるの?」
今日も練習合ったんだよね?
なら学校で遣れるよね?
今日じゃなくて今までも幾度となくそういう時間もあった筈。
なら何故――――?
考えて解らない答えに「んん〜?」捻った声を出して顎に手を添えた。その姿は名探偵ツボミ。
「司が普段練習に参加しないからだ。」
「えッテニス部なのに練習してないの?サボり?」
「――――言い方が悪かったな。部活動には参加しているが部全体の管理を任されている。故にラケットを手にするコトは少ない。」
練習メニューにある筋トレや些細な基本メニューは一緒に熟している。それに試合形式の際も参加している。しかしそれ以外はあまり自由はない。
そうアッサリ言う朔君。それがごく当然のように。恰も自然に言って退けた。けどその自然さは私には理解し難かった。
それは部長だから?そりゃあ部の方針と謂うものがあるからそういう部も在るとは思う。
だけどちょっと待って?
「なら司くんはいつ練習してるの?」
前々日も前日も、そして今日も。その部の方針だとラケットを握る事は少なかった筈だ。
先程の楓君の打ち合いを思い出すがとても練習を疎かにしているようには見えなかい。だけど部活動では余り練習に参加して居ない。
なら彼はいつ練習しているの?
ループする思考に私は顔を顰めた。
「……アイツは努力家だ。だがそれを誰かに見せたコトはない。自らの限界に挑戦して、のた打ち回る姿を見られるコトを嫌う。」
「隠れ努力家?」
「ああ。きっと時間の合間や部活動後の時間に一人で練習している筈だ。アイツは常に自分の限界を追い求めているからな。」
「でもそれじゃ―――…」
すこし不公平じゃない?
そう思った。
部活動に力を注ぐ時間が少ない、プライベートの時間も削られる。他の皆が身体を休めているときに彼は練習していると言うこと。
私は司くんにはハンディキャップが有りすぎるのでは無いかと顔を顰めた。私なら放棄するか不条理な状況に抗議しているかもしれない。それを自然と受け入れている彼が信じ難い。
しかし私の考えとは裏腹朔君は当然のように言う。
「それが司だ」
司と言う人物の計り知れない奥底を狭間見たような気がした。