こうして僕らは、夢を見る
それを私は朔君に話せば、幾分か満足気に口元を上げた。
「――――ほう。楓にしては頑張った方だな。」
充分だと言いたげに頷く朔君に私は更にクエッションが浮上する。楓君と言い朔君といい何の事か私にはさっぱり分からない。
除け者のようで口元をヘの字に曲げると朔君は口元を上げたまま教えてくれた。
「昨日蕾さんが逃げるように帰ったからだ。」
「……え」
少し ドキッ と胸を衝かれた。
隔てて疚しい事なんて無いのに。ただ色んな事が沸き上がりあの場が息苦しくなっただけ。
だから逃げるように去った。それが疚しい事なのかは分からない。だけどそれが朔君達を不快にさせてしまったなら――――‥‥
「楓が気に病んでてな。」
謝らなきゃ―――‥‥
そう思った私の考えを見事朔君は裏切ってくれた。
「楓君が?」
「ああ。チビが逃げたのは自分のせいだ―――とな。まあアイツ等に責められたのもあるが。」
「………」
楓君が……
私は朔君の言葉に目を見開いて、耳を疑った。幻聴かもしれないがこれは幻聴ではない。
頭の傍らで嫌われるのかな?とか思ったりした。でもどうやらそうではないらしい。不謹慎だけど心配してくれていた事が嬉しくて胸が弾んでいる私が居る。
次第に緩む頬を必死に堪える。
「あ、」
目が 、 合った 。
何気なくテニスコートを目にしていると此方を横目で窺う楓君と目が合ってしまった。予想外の事に驚いて目を見開いてしまった。
私の視線に気がついた楓君は直ぐさま目を逸らしたが私はバッチリ楓君と目が合った事に気がついていた。
目を逸らした楓君の耳は真っ赤。いまトマトのように熟した赤色をしている。あの夕日に染まる茜空のような色に。
「しかし今日蕾さんが来たのには吃驚した。俺はてっきりもう来ないかと思っていた。」
「……うん。はじめは来ないつもりだったよ。」
そのつもり
だったんだけどなあ……
知らず知らずの間に皆の事が気になり出してふと気づけば靴を履いてる自分が居た。もやもやする気持ちを抱えてテニスコートに脚を運んだんだよ。
でも。その蟠りは皆を見たら何故か消えちゃった。意図も簡単に。あっさり除かれたんだよ。
「意外とさっぱりしている事に度肝を抜かれた。楓だけじゃなく俺も。それに他の奴等もだ。」
「はは、」
ごもっともです、朔殿。