こうして僕らは、夢を見る
「ふうーん。いつまで続けんだよ?」
「さあ?」
「さあって‥‥。蕾はここが本職な訳でもねえだろ?」
「当たり前じゃん。」
ファーストフード店本職ってどうなのよ。偶々高校時代から雇って貰っていたのがココで卒業してからも、しがないアルバイト店員として勤めているだけだから。地味に大変な玄人(くろうと)は嫌だ
況してやアンタみたいに夜が本職な訳でもない。
「お金が貯まるまでかな。」
「いつに何だよ、それ。」
「ならアンタはあのバンドいつまで続けるの?」
「野望が消えるまでだな。」
「いつに何の、それ。」
翔と同じことを呆れたように言う。きっと翔も私と同じように呆れている。互いに互いを呆れているんだ。何だか変な感じだよね。
でも結局はそういうコト。アンタも私も同じ。終わりの見えない迷路を只ひたすら歩いているだけ。
翔はバンドマンだ。昔は芸能界を夢見ていた離脱者。アーティスト兼実力派俳優を目指して上京してきたは良いが現実の厳しさを叩きつけられ今は小さなクラブハウスでバンドボーカルとして活動中。その資金源はホスト。チャラく見えるが案外、翔も苦労人なのだ。
「こんな筈じゃなかったのになー‥‥‥。」
少しだけカウンターに背を預け、ポツリと呟いた。
それを聞き取ったのか、翔が言う。
「確か蕾って大学受験したんだよな?」
「したよー。落ちたけど。」
落ちてなかったら今頃アルバイト店員なんてして居ない。元々ココは高校生までって決めてたし。
大学に落ちさえしなかったらサークルに入って大学生活満喫して、就職活動に切羽詰まりながらも頑張ってたよ。
あのときのショックは今でも覚えている。友達が受かって自分だけ落ちてしまった、あの衝撃を。数週間引き籠りになったぐらいだ。友達が次々に進路が決まるなか私は焦りだけが募りに積もって最終投げ出した。
進路があやふやのまま高校を卒業して、続けていたバイト先を辞めるコトもなく勤務し続けた。
冗談半分で「正社員に成ろうかな?」とか考えたときもあったけど結局今だアルバイト店員の状態。
本当に全部が中途半端のままだ。