こうして僕らは、夢を見る
そして思い出したように翔に話し出す。半分はただの愚痴だった。誰かに聞いて貰いたかっただけ。
「ずっと高1のときから大学は推薦って考えたんだ。だってさあ?私頭悪いから大学行ける方法なんて限られて来るんだよね。」
「‥‥‥あー、確かスポーツ推薦だっけ?」
「そうそう。その筈だったのに部も辞めさせられて、普通科に移籍になって、全部台無し。オマケに大学受験失敗してさ?―――――――ほんーと嫌になるよね。」
「‥‥‥お前も苦労してるんだな。」
「翔もね。」
お互い苦笑いを浮かべて、目だけで今までの苦労を語り合う。
何だかんだ翔とは馬が合う。こうみえて同い年だ。19歳のときに私がバイトの先輩としてバイト店員として入ってきたばかりの翔を指導したのが切っ掛け。
お互い夜になると居酒屋に足を運び苦労話に花を咲かせた。故に翔のコトは殆ど把握してるし、その逆も然り。翔は良い相談役だ。
一歩間違えれば恋人を通り越して夫婦(めおと)のような関係にも見えなくもない。翔と夫婦なんてあり得ないけど。
「つうか蕾、もう21歳になるじゃねえか。」
「‥‥?なに?まだ21歳じゃん。まだまだ若いよ。人生これからだから。」
「いや、若いけど‥‥」
なに?
言葉を濁らせる翔に私は首を傾げた。
――‥おっと、
ふう‥‥。危ない危ない。
首を傾げた際にアルバイト制服の帽子が落ちそうになり、慌てて頭に戻す。視線は翔に向いたまま。
「蕾、20歳までに結婚するとか宣言してたよな?」
「あー‥‥」
不意に言われて気がついた。
してたしてた。早期結婚を夢見てた時代よね、それ。だけど今でも結婚願望は消えた訳じゃない。
顔は普通。だけど性格は上玉。そんな優しい旦那様に尽くしているのは専業主婦の私。数年後二人の子宝に恵まれる。都内に二階建ての一軒家を35年ローンで購入して車は白のステーションワゴン。可愛い可愛いペット達はラビット三匹とヒヨコ四匹を飼っている。
―――――これが私の脳内家庭像。平凡な家庭で仲の良い順風満帆な家庭に憧れる。