こうして僕らは、夢を見る
「早く結婚して夜からも足洗ってココも辞める所為だよ。それで優しい旦那様に養って貰うの。」
あくまで逃げる体制。
いまのこの現状から私は早く脱出したい。当初と番狂わせな、この現実から私は早く抜け出したい。
そんな私を非難する人は何人居るだろうか?「現実を見ろ。」と逃げる私に言う人は何人居る?――――――――――現実を見ているからこそ楽な方に脚を進めるだけなのに。
失ったモノが大きすぎた私は何かを得ようとするのが怖い。失う事が怖いから。夢を見るだけ付加が係る。――――――それなら端から見なければいい。
常に現実だけを見据えて豊かでゆとりのある暮らしを欲せばいいだけの話。
これが、いまの私の
生き方だ。
そんな私に善悪もなく翔は言う。いつもこんな感じ。だから翔は落ち着く。踏み込むようで踏み込んで来ない。本質が私と似ている。自分の鏡を見ているようだ。
「ま。良いんじゃね?蕾の人生なんだし。最終的に決断を委ねられるのは蕾だ。」
「私の人生かー…。」
翔の言葉に小さく呟いた。
私のこれまでを振り返る。
恰も「ドン底から這い上がった」と云うよりも、そのままドン底で生活しているようだ。だけど今の生活に不満足な訳でもない。満足している訳でもないが変わらない日常に居心地が良い。
「――――――――なんて、綺麗事だけどね。」
ほんとに綺麗事。
居心地が良い、なんて綺麗事。
今の私は曲論を綺麗に並べて自分を正当化しているに過ぎない。
この居心地の良さよりも、もっと居心地の良いものを心の奥底で求めている。かれこれ数年前から。高校生のときからずっと。
だけど羽根を失った私は、欲を隠す為に'今'を住み処としている。所詮夢は夢。現実を見ない奴は負け組に成るしかない。
(――――その考えさえも私の心が曲折された故の邪説――――)
――――――――――私の小さな小言を耳にしたのか、翔が言う。
「誰しも綺麗な事言っても結局は楽な道を選ぶのが人間だろ。夢を見ようとする奴は厳しい道を選ぶ勇者。だけどそんな奴は少数派。ほんの極僅かしかいねえよ。」
‥‥‥相変わらず、説得力がある。
翔がポケットにある煙草に手を伸ばしながらアッサリとした様子で言う。しかし、いま勤務中だった事を思い出したのか舌打ちをして煙草から手を離した。