こうして僕らは、夢を見る



「そんな翔も昔は少数派だったんだよね。」

「昔は昔、今は今だろ?そういう蕾も少数派だっただろうが。」

「昔は昔、今は今だよ。」




翔と同じことを繰り返せば苦笑い気味に笑みを浮かべた。そして、まるで遠いなにかを見つめるような眼差しをする。




「夢を見ない大人は自分で自分を潰してんだよ。」

「誰のコト?」

「―――さあな。」




きっと《夢》から抜け出した大人達に向けて。簡単に言えば自分。又は―――――私か。


《夢》といっても色んな形がある。身近にあるコトから届かないような存在のモノとか。数分後の事や没後の事。自分の事・他人の事・身内の事。


《夢》の形も意味も人其々違う。それをどう再現するのか、どうやって伝えるのかも人其々。


《夢》は叶えるだけが《夢》だけじゃない。叶わないから《夢》と言うんだと私は思った。その逆もまた然り。叶わない物を叶えようとするから《夢》という。


叶わない高みの場所にあるから夢見がちな子供達は無邪気に手を翳す。大人は届かないと推測するから手を翳す事さえしない。翳しても途中で下ろす者が大半だ。




「《将来の夢》なんて未だ将来を見据えて居ない暢気な子供だから言えるコトだと思わねえ?餓鬼の頃は現実の厳しさを知らねえで親の脛をかじってんだからな。」

「‥‥‥‥捻くれてるね?」

「お前には言われたくねえし。」

「現実主義って言ってよ。」




言い種悪いよ。


駄目人間みたいじゃない!と私は不貞腐れる。まあ、あながち間違ってもいないけど。でも認めるのも何か嫌だから言わない。





―――――そして翔は当たり前のように言う。





「夢なんて所詮、夢で終わるのが落ちだろ。」





その言葉に、ふと。


中学の頃から日課のように書き続けている日記に殴り書きで書かれた言葉が思い出された。


ある日、泣きじゃくりながら紙にたった一言だけ書いた。その一言はあの頃を表すには十分過ぎる言葉。それを思い出して自嘲的な笑みが零れた。




「今となっては夢を見ようとするどころか夢を追い掛ける事すらしなくなったけどね――――――――――お互いに。」

「それが成長っつーもんだ。」




成長って怖いなあ〜…。


これまたアッサリ言う翔にしみじみと感じた。夢の為に時間を費やすのが、今となってはお金の為に時間を費やして我武者羅に働いてるんだもんね。


昔はバイトし始める前は我武者羅に部活してたのになあ。バイトもそれなりに充実してたけど。毎月通帳見るのが楽しみだったし。
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