こうして僕らは、夢を見る
司くんのDON説に狼狽える私に、カウンターに肘を付きながら傲慢な態度で話し掛けてきた翼。


一応客だけど偉そうな態度に腹が立って仕方ない。


頬が引き攣るものの相手は客。私は店員。殴り倒したい気持ちを押さえて偉ぶる翼に対処する。




「おい。お前がここの店で働いてるって聞いたから来てやったぜ?この俺が直々に来てやったんだ。感謝しやがれチビ。」

「大変申し訳御座いません。当店でお子様ランチは取り扱って居りませんので。」

「‥‥‥」


――――ガッ!!!!!


「お前はもっとチビに成りてえみたいだな。踏み潰してやろうか?そのまま墓造ってお子様ランチに付いてくる旗を差してやるよ。」

「お子様ランチのメニューを頼んだ翼が私に旗を呉れるってこと?―――――――――すみません。すみません。すみません。すみません。(半分)冗談です。」




カウンターに手を付き身を乗り出して来た翼にポロシャツの襟首を掴まれて脅された。目が血走ってて滅茶苦茶怖い。恐喝紛いだ。


だいたい翼がお子様ランチ注目するとか本気で言うわけないじゃん!(半分)冗談だよ!




「は、離して下され。」

「‥‥チッ。」




襟首を離すように託すと渋々ながら解放してくれた。凄むような態度で舌打ちされて鬼の形相で睨まれれば私は気後れするしかない。


あきらかに営業妨害だろ、これ。だいたい私が此所でバイトしてるコトをチクったのは誰だ!こんな厄介者達を誘き寄せやがって!


―――――――数日前にバイトの話をしていた朔君に目を遣る。




「俺ではない。」




私の視線の糸に気づいたのか否定された。


私も確かに朔君では無いと思う。朔君―――――――と言うより。誰にも私のバイト先は話していないような気がする。


ならどうして?と首を傾げる私に朔君は言う。




「濱口(はまぐち)と言うやつがここに居るだろう?」




濱口?濱口…ハマグチ…




「あ。濱口君?居る居る。バイトの子だよ。」

「俺のクラスメートだ。」

「マジか。」



滅茶苦茶驚いた。

なにその衝撃の事実。



濱口君という名前の若いバイトさんは嘗て、バカップルを追い払った称号を持つ勇敢な店員。
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