こうして僕らは、夢を見る
濱口君って光陽高校だったんだ。なら私の後輩ってことになるじゃん。わ、世間って狭っ!



濱口君とは今度光陽高校の話で盛り上がれそうだなあ〜‥‥‥。



教頭とか未だ居るかな?丸眼鏡の。あとアイドルの熱狂的ファンな体育教師。こう考えてると光陽の教師は濃い面子ばっかりだった。それに人情深い先生が多かった。私は周りの環境に恵まれてた。



しみじみと懐かしい光陽高校の面影に浸っていると、不意に思う。



濱口君が光陽高校の生徒で朔君のクラスメートと云うことなら濱口君は体育科―――?






ん?


濱口君はここでバイトしてる。


だけど普通科ではない。


――――――‥あれ?






「光陽の体育科って確かバイト禁止の筈じゃ―――」






そう。光陽高校普通科は申請書さえ出せばバイト可。しかし光陽高校体育科はバイト自体不可。推薦でこの高校に入った者なら尚更。



まあ、推薦枠を勝ち取った子達はバイトと両立なんて気は興さないだろう。そんな生半可な気持ちで入学しては居ないと思うし。



だけど問題は濱口君。入学方法がどうであれ、体育科。バイト禁止の筈の体育科の生徒さんが何故バイトをしている―――?



理由は小遣い稼ぎ。部活の費用。又は好奇心。社会勉強。理由の候補は多々ある。



だけど普通は、それをワザワザ司くん達に教えるもの?



いや、無い。普通は教えない。だって司くん達に教えて噂が立てば自分は退学の危機に晒される。



ならどうやって司くん達は濱口君からバイト先を《聞いた》の?



―――‥‥私の悩めかしい眼差しの意図に気が付いたのか、司くんが笑いながら教えてくれた。











「丁重にお願いしたんですよ。バイトしている事をバラさないからバイト先を教えて欲しいと。」

「脅しかよ。」




ああ。頭痛い。


深く考えた私が馬鹿だった。




「ふふ。違います。ただの正当な取り引きですよ。」




含み笑いをしながら言った司くん。けれど、何だか腑に落ちない。絶対何かある。正当性や妥当な理よりも不当な取り引きだと聞こえるのは何故だろうか。
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