こうして僕らは、夢を見る
「プリクラか〜‥‥。」
思い出そうと必死に思考を巡らす。最近の出来事を記憶の棚から、あれやこれやと引き出す。
まず何で私のプリクラを濱口君が持ってるの?私、濱口君にプリクラなんて上げたっけ?
私は普段からプリクラなんて撮らない。だから上げるにも上げれない。持っていたとしても自分の見るに耐えない末恐ろしい程の顔写真を上げはしないし‥‥
んん―‥‥?
あ――‥‥ダメだ。
分からない。
幾ら考えてもその《プリクラ》の詳細が思い出せない。モヤモヤと蟠りが心を覆う。出掛かっているのにスンナリとは出てこない。こういうモヤモヤってスッキリしないから気持ち悪い。
悩む私を手助けするかのように翼がある手掛かりを教えてくれた。
「チビと濱口と――――さっきの男が映ってたぜ。」
さっきの男?と首を傾げると朔君が告げる。
「金髪の奴だ。」
金髪って――‥‥あ。
翔の事か。
このお店に金髪なんて翔しか居ない。どこに居ても直ぐ分かる金髪。金色が無いとサボっている事も直ぐに分かるのでその点は楽だ。
金髪なんて言っても純度100%の司くんの髪の方が綺麗だ。翔も綺麗に染まっているが髪質が悪い。染めすぎだし弄りすぎ。
そしてプリクラに映っていたのが濱口君・翔・わたしの3人だと云うことが分かると――――――――――――謎が解けたように蟠りがスッと消えた。
「そう言えば3人でバイトの帰りに撮ったよ。」
なるほど。なるほど。だからバイト仲間だって分かったのか。
ひとり「うんうん」と納得したように頷く名探偵ツボミ。迷宮入り寸前の謎が明解されるのは快い。
何枚か撮ったプリクラの落書きには【濱ちゃん*つーちゃん*かけちゃん*bytemember】とかポップに書いてあった気もする。
因みに書いたのは意外にも濱口君だったりする。若いって素晴らしい。唯一の女である私なんて新作のプリクラ機の前でオロオロしてた。少し世代を匂わされたよ。
あのプリクラを濱口君が携帯に貼ってくれていることが嬉しくなって自然と顔が綻んだ。
最近のプリクラ機は凄かった。人類の開発って恐ろしい。素っぴんの私の目があり得ないほどデカくなってたから。詐欺どころでは無い。もはや別人だよね、あれ。