こうして僕らは、夢を見る
自分に自信がない女の子でもプリクラを撮れば別人になれるんだよ。なんたって私はプリクラの中では5歳ぐらい若返ってたからね。



美容外科顔負けの最新のプリクラを思い出していると、珍しく楓君が話し掛けてきた。嫌みったらしいけどね。






―――だけどね、楓君?



間違ってるよ、君は。プリクラの事なんて私に聞かないでくれ。私なんかが可愛いガール達に人気なプリクラ機を分かるわけない。だけどプリクラでどんなポーズをしようが私の勝手じゃーい。



細っいモデルさんみたいに雑誌に載る訳じゃ有るまい。絶対モデルさんって拒食症だよね?細すぎだよ。見てるこっちが心配になる。今時の女の子は流石だ。





「プリクラを撮るためのルールなんて(多分)無いよ。順番待ちとかのマナーはあるけど。」

「だからって何で変顔なんだよ。ブスが更にブスになるだろ。」

「失礼な。あれはノリで遣っただけだから。もっと可愛いポーズも(多分)出来る。」

「どうだかな。ブスはブスに変わりはねえからな。変顔と然程変わらねえに決まってんだろ。」

「甘いな楓君。最近のプリクラを嘗めちゃイカンよ。なら今度一緒にプリクラ撮ろう?」

「なっ。変態かテメエは!」





え。何でプリクラが変態なの?





「ふ、二人であの機械のなかとか馬鹿じゃねえの!?」





顔を真っ赤にさせて狼狽えている純情ワンコに、思わず私は目を見開いた。


純情にも程があるから。怖すぎる見た目と合致してないよ。プリクラ機の中に居るだけで駄目なら、密室に二人きりとか楓君は失神してしまうだろうな。


そんな下らない掛け合いをしていると。







「ねえ。蕾さん。」



司くんが話に割って入ってきた。先ほどより幾分か穏和な司くんに戻っていることにホッと胸を撫で下ろした。



「ん?」

「あの人どういう関係なんですか?」



あのひとって翔の事だよね?



「バイト仲間、だけど。」



ただのバイト仲間だよね?―‥私が逆に聞き返したくなる。


翔との関係なんて考えた事もなかった。翔とは案外アッサリした関係。互いに干渉し合うが、一歩引いたまま。だから長く関係が保つ。友達?心友?うーん‥‥


とりあえずバイト仲間にしておこうと、


そう決め司くんにはそう言った。





「――‥ふうん。」




バイト仲間と言った私に司くんが意味深に頷いた。恰かも納得のいかないような顔をされる。


え、なに?‥‥司くんの反応に私まで怪訝な面持ちをしてしまう。


そして。






――――――――次の瞬間小さく呟かれた言葉が私の耳に届くことはなかった。



















「―――‥ただのバイト仲間にしては親密すぎだろ。気安く触らせてんなよ」


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