こうして僕らは、夢を見る
司くんの声が私の耳には届かず、聞き返そうとしたが。




「司。」




朔君が司くんを咎めるような声色で制したことで聞きにくくなった。朔君に制されたことで司くんはムスッとしている。


それはさっきと同じ光景。逆戻り。何だか変な雰囲気が流れたとき――――――マイペースな彼が動いた。






「お姉さん、俺チーズバーガーセットね〜。ドリンクは烏龍茶で」




籃君が天から舞い降りたエンジェルさんに見えた。


カウンターに肘を付いてレジの前に立つ私にヘラヘラとした笑いを見せる。気怠い笑みも今では天使の微笑みに見えるよ。




「あ。うん。了解。」




この空気をぶち壊してくれた籃君に感激だ。私は即座にレジにピッピッと打ち込む。


そうそう、これでいい。さっさと買って帰ってくれれば良いんだよ。君たちが店内に居られると何かと仕事が増える。







「おい。ベーコンレタスバーガー。あとお前の奢りな」

「まじ?サンキュ〜。お姉さん」

「忝(かたじけ)ないな」

「なら俺ビックキチンセット二つでヨロシク」

「おい」




ちょっと待て。


まだ私はうんともすんとも言ってないぞ。


翼の言葉に乗った籃君と朔君と楓君。籃君と楓君は予想通りの反応。でも朔君が乗ったのは意外だ。そう思い朔君を見てみると――――――――目があった。






「冗談だ。」




無表情な顔で言われても説得力無いから。案外洒落の利く人だったんだと分かった。意外な一面だ。


涙君と司くんは乗ってこなかった。涙君は道理かな。眠たそうにしてるし。だけど司くんは―――――――‥




「‥‥‥‥」




超不機嫌。


ほんとに司くんに何があったのか私は分からない。これっぽっちも理解出来ていない。店に来たときから怒っていたみたいだけど店に来て更に悪化したみたいだ。


そんな司くんを見兼ねたのはやはり皆さんの世話係的存在。




「司。もういい加減にしろ。」

「‥‥‥煩い。朔は黙ってて。」

「蕾さんに迷惑が掛かるぞ。現に困っているだろ。」




え、わたし!?


そこで私の名前出しちゃうの?


まさかの発言に驚きつつも朔君に言われた司くんは此方に目を向けてきた。




「‥‥‥」

「‥‥‥」




な、何か話して欲しい。



沈黙後。漸く口を開いた司くん。




「怒ってるんですか?」




済まなさそうな声色で訪ねてきた司くん。


内心では弱気な司くんに戸惑いながらも「怒ってないよ」と笑みを見せながら言うと司くんは再び、本当に申し訳なさそうに謝った。




「‥‥‥‥すみません」




司くんの謝罪を聞いていた、

そのとき。


< 82 / 292 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop