こうして僕らは、夢を見る




そして怯える濱口君に悪いと思いながらも素知らぬフリをしながら自然に話掛けた。




「濱口君交代なんだよね?」

「え゛」




あからさまに嫌がった濱口君。


並んでるお客様が司くん達だと知っていたら私に声を掛けなかったんだろうな。きっとタイミングを見計らって出てきたに違いない。


私と濱口君が交代だと知った籃君はヘラヘラと笑いながらレジの前に立つ濱口君に話掛けた。




「濱口く〜ん。俺はダブルチーズバーガーセットね〜。是非奢りで頼むわ〜」

「は、はいっ」




先ほど注文したチーズバーガーセットがダブルチーズバーガーセットになっている。「奢り」だから地味にリッチにした籃君。


素直に頷く濱口君。どんだけ君達は怖がられてんだよ。レジの打つ指先が震えてるから。


え。スポーツマンだよね?君達。スポーツマンどころか同級生から金を巻き上げる虐めっ子みたい。IJIME×KINSHIの旗を掲げなくてはならないな。きっとそのときは自ら濱口君が会長に立候補してくれるに違いない。




「濱口。俺は‥‥――――ここで一番高いやつを寄越せ。」

「畏まりました。コカ・コーラのMサイズですね。」


――――ガッ!!!!!


「ああん?嘗めてんのかテメエはよ。俺様は炭酸飲めねえんだよ。それもMだと?――‥嫌みか!Sなら許してやらねえ事もない。」




この光景、2度目です。



ポロシャツの襟首を掴まれた濱口君はカウンターに身を乗り出している翼にチンピラ風に脅されている。若干涙目だし。


わたしは今度は見る側。先ほどは掴まれる側だったから、濱口君の気持ちは痛いほど分かる。


て言うか、炭酸無理なんだ。何か意外。飲めそうな顔して炭酸無理とか可愛いんだけど。


それよりも――――突っ込みどころがチゲエえええええええ!!!!!!


何で誰も突っ込まないの!?


この店で一番高いメニューはコカ・コーラのMサイズじゃないよ!なら、せめてLサイズにしよう!コカ・コーラLサイズも一番高くは無いけどね!




「‥‥‥オレ。コーラ。L。」

「あ、畏まりました。」




ボーッと何を考えているのかわからない不思議ちゃんの涙君が頼むと濱口君もそれに対応する。涙君は恐怖対象外のようだ。


まず涙君も恐怖政治組だったら、お姉さん泣いちゃうよ。


《ズバリ!エンジェルの正体はデビルでしたのよ!オホホホホ!》なんて洒落にならない。カルチャーショックで数週間寝込みそう。
< 85 / 292 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop