こうして僕らは、夢を見る
テニスバックを肩に掛けたテニスプレイヤーに絡まれるファーストフード店のアルバイト。



端から見れば変な光景だよね。わたしは一歩下がったところからその光景を見守っている。



何だかんだ言っても彼らと濱口君は同級生。特にギスギスした雰囲気はない―――――――恐怖ならあるけど。



朔君から注文を受ける濱口君。クラスメートらしいから仲は良いかな?―――とか思ったけど、そうでも無いようだ。濱口君がかなり怯えているから。心なしか翼のときよりも怯えない?



きっと恐怖政治組なワケではなく単純に朔君の醸し出すオーラが怖いんだろう。COOLだし厳格っぽいもんね。でも案外お茶目。






「は?マジかよ!お前新作のゲーム買いたい為にバイトしてんの?ぜってえ馬鹿だろ。フットボールの顧問にどやされんぞ。」

「見つからなかったら大丈夫だ!見つかる自信はないから怒られる心配もない!」

「見つかれば退学だからな。」

「‥‥‥‥‥。」

「あ〜。顔真っ青〜。中々やんね〜。濱口くん。オレにはそんな駆け引き無理だし。」

「テニスする時間減るからバイトとかどうでもいいぜ。」




仲良いのかな?楓君と濱口君がゲームの話とバイトの話をしていると、朔君が介入した。


余りにも残酷な一言に顔を真っ青にして項垂れた。きっと最悪の状況を想定したんだろう。


そんな濱口君を籃君と翼がバッサリと切り捨てた。案外マトモな意見の2人。やっぱりテニスが生活の中心なんだと感心する。




「だけど新作プレミアムのゲームなんだよ!高いんだよ!小遣いだけで買えないんだよ!分かるか俺の気持ちが!喉から手が出そうなほど欲しいゲームが届かない俺の気持ちが!ゲーマー仲間の間ではかなり有名なんだ!ゲームマスターの名を掛けて手にいれる為に俺は日々バイトに励むんだ!だけどハンドボールだって疎かにしたりなんてしない!レギュラーは俺のものだ!そして何(いづ)れゲームも俺のものになるんだ!」


「へえ。いつ発売すんだ?」


「来年の4月。」


「「「「「‥‥‥」」」」」




―――ッまだまだじゃねえか!!!!!!!!!!!!!!!!!



そう楓君達の心の声がハモった。聞いた楓君なんて尋ねたことを後悔しているはず。あまりにも熱弁するからきっと近々発売の品で必死なのかと思えば、………来年。


濱口君は来年に備えてアルバイトしているんだ。


気早くね!?まだ夏ですが!寒い冬にも肌寒い秋にもなっていない真夏のサマー真っ最中ですが。


思わず突っ込みたくなる。だけどこれがゲーマー魂なんだろうな。だけど高がゲームの為に校則を破るのも頂けない。でも濱口君が闘志を燃やしているから言えない。
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