こうして僕らは、夢を見る
彼等にとってテニスは生き甲斐なんだと思う。生活の中心となっているテニスが奪われると全てが灰色になり自分が生きている価値さえ見出だせなくなるくらい。



だけど、どうだろうか?



いま一度。よーく考えてみよう。



私が居なくても彼等のテニスには何の変化もない。その逆も然り。私は彼等が居ても居なくても今の生活に何ら変化は無い。それと同じこと。支障を来す恐れもない。



うーん‥‥



それほど彼等が私を好いてくれているとは思いがたい。ただ思春期特有の興味心とかかもしれない。―――‥うーん。難しいなあ。



ウ〜ンウ〜ンと唸る私に翔は笑いながら、言う。






「どっちにしろ蕾がイケメン君達と関わりがあることに吃驚したわ。しかもスポーツマンだし。」




翔が本当に驚いているのか微妙なところだ。


ドットの包み紙を開けチョコを口に含みながらそう思う。甘ッ。




「知り合ったのは最近だよ。」




そう。本当に最近。


しかも最後に会った日は、2度目の無断帰宅。バイトだったから。だけど無視して帰ってしまった事は物凄く申し訳なく思う。


詰められたらどうしようかと若干焦ったが、先ほどその件に関しては触れられなかった。いっそのことこのまま帰って欲しいよね。何事もなく丸く収まる。









そしてパイプ椅子から立ち上がり冷蔵庫を開けた。休憩室に置いてあるミニ冷蔵庫から出したのは、予め持参して置いたカルピス。


お。冷えてる。冷えてる。


再びパイプ椅子に座り、キャップを開けるとカルピスを飲む。喉を潤すカルピスが堪らなくウマイ。






「んなこと聞いてねーし。」

「言ってないもん。」

「言えよ。」

「翔に言う必要ある?」

「無い。」

「なら良いじゃん。」

「そうだけどよ――‥」




若干不貞腐れている翔、またもや煙草に火を付けだした。


吸いすぎだバーカ。身体に悪いんだからね。酒も煙草も悪影響過ぎ。だいたい何で苛ついてんの?




「俺って蕾にとって何?」

「あ。それ私も思った。」




司くんに言われて思ったこと。


思わずカルピスを飲む手を止めて翔を見つめる。




「翔にとって私って何?」

「彼女。」

「うざ。何番目のだよ。」




絶対わたし五番目ぐらいの彼女になるじゃん。


ヘラヘラ笑いながら私を見ている。だからプレイボーイは嫌なんだよ。友達なら未だしも、翔は絶対彼氏にはしたくないタイプだ。
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