こうして僕らは、夢を見る
遠慮がちに扉を開けて休憩室へと入って来た濱口君を見てから私の頭の中は混乱状態に陥った。



それはもう目眩がするほどに。



頭ではミニ蕾たちがせっせと駆け回っている。ツボミ小人versionだ。何やら口論中らしい。









小人1{タイヘン!ヘンタイ!タイヘン!キタ!Mr.HAMAGUCHI!キタネ!タイヘンダ!}


小人2{怒られちゃうのかなあ?怖いなあ。帰れよ濱口}


小人3{待て。そうとは限らん。あ奴が休憩室に来た理由は別のことやも知れん}


小人4{蕾。聞いてみるのYO〜。さあ勇気を出せYOOOO〜。Ha-i}







そうだよね。焦らなくてもいい。何も濱口君が休憩室に来た理由が私を呼びに来たとは限らないじゃない!ただの休憩かもしれない!



だから蕾さんって呼んだんだよ。交代?うん。変わって上げるよ。さあ勇気を出して聞いて見よう。きっと彼達は100%関係ないから。うん。きっとそうだ。





「何かな?」

「や、八神達が呼んでます。」

「(やっぱりいいいい!?)」





何が関係無いじゃボケ!無いどころかドンピシャじゃボケェェ!


内心発狂状態の私は小人達が脳内で抹消された。私の発狂で吹き飛ばされたのだ。チーン。ご冥福をお祈り致す。我が小人達よ。






「…あ、あの」

「は、はい!」

「いっ、行って貰えますよね!?ね!?ね!?ね!?」





勢い良くグイグイと顔を近づけながら聞かれる。目が血走ってて怖い。それもそうか。命掛かってるんだもんね。私を呼び出すという任務を課せられたんだから。



濱口君の心配はきっと任務に失敗した後のこと。私が行かないと甚だしい被害を及ぼすのは間違い。濱口君の平和な学校生活の命運は私に掛かっている。



だけど‥‥――――――――――だからと言って私が行くのも嫌だ。何を言われるのかと思うと背筋がヒヤッとした。



どっちも折れない。何故なら互いに譲れない理念があるから。私は行きたくない。絶対に行かない。色んな意味で顔色の悪い私と濱口君。何だか変な光景だ。



見つめあいが睨み合いに変わったとき――――――――――又もやインチキ予言者が出しゃばった。インチキ予言者から只のお節介に命名だ。








「行ってこいよ。」




その言葉に濱口君は瞳を輝かせた。それとは裏腹に私からは死相が漂う。マジでお節介だよ、翔君。





「なら翔が行けば?」

「はあ?何で俺なんだよ。蕾が呼ばれてるんだから蕾が行けよ。」

「ええ―‥‥。」

「そんな怖い奴等なのかよ?」

「「‥‥‥」」






このとき。


私と濱口君の心は確かに通じ合った。お節介(元祖インチキ)・翔の言葉に心底頷きたくなった私達。
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