こうして僕らは、夢を見る
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【20:43】
針時計の長針が43。短針がもうすぐ9を指そうとしていた。店の外に出ると周りは薄暗く彼方此方で店の看板や装飾が綺麗な色の灯を灯し始めている。
外は寒いかな?と思ったけど案外そうでもない。真夏真っ盛りだから外の風は涼しいくらいで丁度良いぐらい。
わたしの勤務時間は21:00までだから後もう少し。
だけど今は彼等のお見送り。見送るなんて何か凄い料亭みたいだ。と言っても実際は何処にでもある24時間営業のお店。こんなファーストフード店見た事がない。
そして私の目の前に立つ司くんが申し訳無さそうに言う。夜でもその金髪の輝きは失われていない。
「出てきて貰ってスミマセン。」
うん。全くね。
思わず出てきてしまいそうになる言葉をグッと呑み込んだ。危ない。危ない。
「大丈夫だよ。」
いまは店内も空いてるしね。
そう言うとホッと安心したように笑ってくれた。
ピーク時の忙しさは半端無かった。19:30から20:15頃だ。数時間前の翔との談笑が嘘みたいに私も忙(せわ)しなく店内をバタバタしていたくらいだから。
だから――――――この時間帯になる迄司くん達も店内に居座っていた。
「お疲れ様です。」
「ふふ。有り難う。」
――――先ほど司くん達に呼ばれたワタシ。
何なんだと思えば意外にもただの雑談だった。濱口君も呆気に取られていた。昨日のTVがどうだったとか有名女優のスキャンダルがどうだとか。そんな他愛もない話をする為に私は呼び出された。
それから数十分後に私はバイトに戻る時間になったから雑談は其処でお仕舞い。
しかし彼等はそんな他愛もない話がしたかったワケでは無い筈。きっとタイミングを窺っていたんだろう。楓君の目が忙しなく宙に迷っていたからだ。
だから現在(いま)『店に来てくれたお友達のお見送り』と称してワタシは店の外に居る。
「この前は勝手に帰ってゴメンね?」
「全くだぜ。」
言われる前に先に謝れば太々しく翼が言った。少しだけ―――――――――カチンッ!と来たが明らかに無視して帰宅した私が悪かった為突っ掛からなかった。
有難く思え、愚民ツバサタンよ。私がキレたらお前なんて片手で捻り潰せるんだから。ふふん。