世界をあげる
俺は澪さんを追いかけることも、利一さんに声をかけることもできず、俯いたまま口に入っていたご飯を咀嚼していた。
「…言い方が悪かったかな…。」
利一さんの呟くような声。
「…いや、利一さんの言葉は何も悪くなかったですよ。」
「違うんよ。澪にあんなこと言ったらいけんかったんかもしれん。」
「え?」
「澪はな、10歳のとき両親を一度に亡くして親戚に引き取られたんよ。」
…知らなかった。澪さん自分のことはあまり話さないからなあ。
「でもその親戚に厄介者として扱われてな、それからいろんな親戚のところにたらい回しにされて。」
「…。」