世界をあげる
「吉村ー!」
高校入学の前日、俺は杉野の家に遊びに行っていた。
「じゃーん!一昨日ケータイ買ってもらったんだ!」
満面の笑みでケータイを見せてくる杉野。
俺は卒業式前に買ってもらっていた。
「番号とアドレス教えてよ。赤外線ってどうやるんだっけ?」
嬉しそうにケータイをいじる杉野を見て、俺は静かに口を開いた。
「…あのさ、杉野、話したいことがあるんだ。」
「なんだよ改まって。先にアドレス交換しようぜ。」
「いや、先に聞いてほしい。」
「…わかった。」
杉野はよくわからないといった表情でこちらを見た。