世界をあげる

『吉村へ。
吉村がここにいることは、おばさんから聞きました。俺がここに来た理由は、吉村にちゃんと謝りたかったからです。
中学のときから吉村はずっと親友で、吉村以上に気の合う友達は今もいません。
でもそんな友情を壊したのは俺です。俺が裏切るようなことをしたから。
言い訳になるけど、俺はみんなに言いふらしたりはしてない。ただ、ひとりにだけ、吉村の秘密を喋ってしまった。俺が高1のとき好きだった伊藤さんが、吉村のことを好きだと聞いて、俺はムキになってしまって、伊藤さんに吉村のこと話してしまった。そうすれば吉村のことは諦めるだろうと安易な考えで喋ってしまった。本当にごめんなさい。まさか広まるなんて思わず、吉村の気持ちも考えず、本当にひどいことをしてしまったと思う。噂が広まって、喋ってしまった罪悪感から目を合わせることもできなくなった。ものすごく後悔しています。本当にごめん。
連絡が遅くなったのもごめん。吉村はもう俺のこと嫌いだと思うし、会いたくないだろうと思ったから、会うのはやめようと思ったんだけど、どうしても成人を迎える前に、大人になる前に、一度話したかった。また友達になりたかった。電話もメールも通じなかったので変えたんだと思うけど、俺は高校のときから変えてないから、もし話してくれるのなら連絡ください。』

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