世界をあげる
古本屋も相変わらずだ。
常連になってる宮田のおばあちゃんはいつも利一さんと世間話をするために店に来る。
そして何も買わずに帰る。
いいんだけどね、別に。
澪さんの遺した小説は、結局どこにも応募しなかった。
利一さんが自ら業者にお願いして本にした。
その本は利一さんの店に並べてある。
売り物にはせず、来た人が読めるように置いた。
読んだ人みんなが「澪ちゃんらしい」と笑顔になる。
どれも優しい物語なのだ。