世界をあげる
「利一は、あったかい春の日に、上等な揺りかごに入って、うちの前に置かれとった。愛されとるんやなってわかったよ。」
「子どもを置き去りにすること自体に愛なんてないやんか。」
「なんか育てられん理由でもあったんやろ。」
「親の都合で子ども捨てんなや!」
「どんな理由かはわからんけどな、利一の本当のお母さんは、利一が一番幸せになれる方法を選びたかったんやと思う。」
「…それが捨てることやったん?」
「うちは利一が来る前から託児所しおったし、葉子は子ども好きやし、経済的にも裕福やないけど困ってもない。やからこそ、うちに利一を連れてきてくれたんやと思う。愛してなかったらこんな手紙付きでうちにお願いなんてしてこんよ。」
幸平は利一の頭を撫でた。