世界をあげる
部屋に上がってもらい、お茶を出した。
「花を連れて帰るん?」
そう切り出したのは利一さん。
しかし、碧さんはキョトンとしていた。
「え?利一さんが花を養子にしてくれるんでしょう?だから私は手続きに来たんです。」
そんな碧さんを見て、言葉が出なかった。
「…花と一緒に暮らす気はないん?」
「私にはこの子がいるから。」
碧さんは愛しそうにお腹を撫でる。
「だからもう、花は愛せない。花はいらないんです。」
悪びれもせず、そう言いきる碧さんに腹が立った。