世界をあげる
父さんの車の中で、俺はふと思った。
「ねえ父さん。」
「なんだ。」
「世界はひとつだけじゃないんだね。」
「は?」
一人一人に世界はある。
自分の世界の中心はもちろん自分で、他人は脇役にすぎない。
誰かの世界で自分が消滅したからと言って、すべての世界が崩れてしまうわけではないのだ。
俺は利一さんや澪さん、花ちゃん、出会った人たちみんなの世界に居場所をもらった。
そして俺の世界にも彼らの居場所ができた。