世界をあげる


父さんの車の中で、俺はふと思った。

「ねえ父さん。」

「なんだ。」

「世界はひとつだけじゃないんだね。」

「は?」

一人一人に世界はある。

自分の世界の中心はもちろん自分で、他人は脇役にすぎない。

誰かの世界で自分が消滅したからと言って、すべての世界が崩れてしまうわけではないのだ。

俺は利一さんや澪さん、花ちゃん、出会った人たちみんなの世界に居場所をもらった。

そして俺の世界にも彼らの居場所ができた。

< 379 / 403 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop