世界をあげる

恋心



「りーちゃん、いっくん、たろーちゃん、いってきまあす!」

今日も花ちゃんは元気よく学校に行った。

記憶喪失のお兄さんが来てから2日経ったがまだ記憶は戻っていない。

名前がわからないと不便だから、花ちゃんがお兄さんを『太郎』と命名した。

「泉くん、何か手伝うことある?」

「…あー、じゃあこれで本屋の掃除お願いします。」

「わかった。」

太郎さんは利一さんに負けず劣らず家事ができない。

玉ねぎを切ってもらうと、まな板と包丁が真っ赤に染まった。

洗濯機の使い方もわからず、干すのも畳むのもぐちゃぐちゃになる。

かろうじて掃除はできるといったところ。

凄まじく不器用だ。

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