世界をあげる
「太郎はいい子よ。」
利一さんは太郎さんの頭をなでた。
「太郎は思いやりのあるよくできた子よ。今までいろんな人の気持ち考えて生きてきたんやろうな。人一倍優しくて、人一倍繊細で。」
太郎さんの目からは涙が溢れた。
「太郎は頑張っとるもんな。太郎には太郎の良さがある。それは俺も泉も花もわかっとるし、家族や会社の人たちもわかっとると思う。」
利一さんはにこりと笑う。
「でもな、ちょっとだけ勇気出してみい。」
「…勇気?」
「みんながみんな、太郎みたいに人の気持ちを察することができるわけやない。言わなわからんこともあるんよ。」
「…。」
「いっぱい悩んでいっぱい抱えてきたもん、全部話してみいや。ちゃんと向き合えばまた笑えるけん。」
「…はい。」