Secret Lover's Night 【連載版】
乗り込んだタクシーの中で「忘れ物は…」と確認するサナの鞄の中を、ハルが隣から覗き込む。
「これだけ?」
「そう」
「どれが一番大事?」
「んーっと」
見つめ合い、プッと噴き出す。まだ名乗り合ってもいない者同士なのだけれど、不思議と穏やかな時間が流れ始めていた。
充電の切れた携帯と、小さなうさぎのぬいぐるみ。それを収納していた小さな鞄と、乱雑に放り込まれた何十枚かのお札。それがサナの荷物の全てだった。
それを大事そうに抱え、サナは嬉しそうに笑う。着替えも履く物もない、まさに「着のみ着のまま」の状態で、あまつさえ見ず知らずの男に連れられているというのに。
それでも、サナは嬉しそうに笑っていた。
「ここから出るの初めて!」
そう笑うサナの手をギュッと握り、俯きながらハルは頷いた。10分程度の道程を、黙って手を繋ぎながら揺られる。
「もう着くよ、サナちゃん。あ、その角で停めてください」
「あっ、これ」
「男と一緒におる時に、金なんか出したらあかんで」
「あかんの?」
「そう、あかんの。おっちゃんこれで。釣りええから」
引っ張り出され、「そんなん知らんかったー」と、感嘆の声を漏らすサナ。今度はそんなサナの手を引いて、ハルが先導役を務める。
「これだけ?」
「そう」
「どれが一番大事?」
「んーっと」
見つめ合い、プッと噴き出す。まだ名乗り合ってもいない者同士なのだけれど、不思議と穏やかな時間が流れ始めていた。
充電の切れた携帯と、小さなうさぎのぬいぐるみ。それを収納していた小さな鞄と、乱雑に放り込まれた何十枚かのお札。それがサナの荷物の全てだった。
それを大事そうに抱え、サナは嬉しそうに笑う。着替えも履く物もない、まさに「着のみ着のまま」の状態で、あまつさえ見ず知らずの男に連れられているというのに。
それでも、サナは嬉しそうに笑っていた。
「ここから出るの初めて!」
そう笑うサナの手をギュッと握り、俯きながらハルは頷いた。10分程度の道程を、黙って手を繋ぎながら揺られる。
「もう着くよ、サナちゃん。あ、その角で停めてください」
「あっ、これ」
「男と一緒におる時に、金なんか出したらあかんで」
「あかんの?」
「そう、あかんの。おっちゃんこれで。釣りええから」
引っ張り出され、「そんなん知らんかったー」と、感嘆の声を漏らすサナ。今度はそんなサナの手を引いて、ハルが先導役を務める。