Secret Lover's Night 【連載版】
相手はもう大人なのだ。その上、カメラマンという華やかな職業に、モデルと間違うほどの容姿。仲間に「王子」などと平然と呼ばせているほどとなれば、そこいらの女が放っておくはずがない。選びたい放題の中で、こんな年端のいかない小娘など相手をするはずがない。
はぁぁっと深く息を吐き、ふと思考の端に引っ掛かりを感じる。あの男、「俺はお前を離したくない」と言っていなかったか?と。
「ちー坊、ちょっと訊きたいんやけどな?」
「ん?」
「ハルさんとは…どうゆう関係なんや?」
「どうゆう関係?」
「その、何や、あのー…」
言い淀む吉村の顔を覗き込み、千彩がしゅんと眉尻を下げた。そして手を伸ばし、吉村の皺の寄った眉間をゆっくりとなぞる。
「おにーさま、怖い顔」
「おっ…おぉ」
「はるもね、いっぱいそんな顔してた」
「そっ…そうか」
「でもね、もうしないよ?はるはね、ちさがいっぱい大好きって言ったら笑ってくれる。だから、おにーさま、大好き」
難しいことは、おそらくこの子にはわかってはいない。けれど、この子はひとの気持ちを掴むことが上手い。自分なんかよりもずっと。
堅物だと有名なボスが猫可愛がりした娘なのだ。もしかしたら…と、にっこりと笑う千彩の髪をそっと撫でた。
「ちー坊は…ハルさんが大好きなんやな」
「うん」
「ハルさんは?」
「はるもちさ大好きって。ちさのはるとやでって」
はにかむ千彩の表情が、いつか見せた美奈のそれにそっくりで。ジンと胸の奥を熱くする想いに、吉村は唇を噛む。
「ちー坊…お前はママそっくりになったな」
「ママ?」
「ママもな、そうやって笑ってた時があったんやで。お前は見たことないかもしれんけどな」
吉村の知る美奈という女は、とても脆く、繊細な女だった。
出会った頃は、もう既に壊れかけていた。まるで人形の如く放ったらかされていたまだ幼い千彩の面倒を懸命にみながら、吉村は必死で手を差し延べた。何度も一緒になろうと言った。この二人を自分が守っていくと決めていた。
けれど、美奈がその手を取ることはなく、残された千彩が自分の宝物になった。
はぁぁっと深く息を吐き、ふと思考の端に引っ掛かりを感じる。あの男、「俺はお前を離したくない」と言っていなかったか?と。
「ちー坊、ちょっと訊きたいんやけどな?」
「ん?」
「ハルさんとは…どうゆう関係なんや?」
「どうゆう関係?」
「その、何や、あのー…」
言い淀む吉村の顔を覗き込み、千彩がしゅんと眉尻を下げた。そして手を伸ばし、吉村の皺の寄った眉間をゆっくりとなぞる。
「おにーさま、怖い顔」
「おっ…おぉ」
「はるもね、いっぱいそんな顔してた」
「そっ…そうか」
「でもね、もうしないよ?はるはね、ちさがいっぱい大好きって言ったら笑ってくれる。だから、おにーさま、大好き」
難しいことは、おそらくこの子にはわかってはいない。けれど、この子はひとの気持ちを掴むことが上手い。自分なんかよりもずっと。
堅物だと有名なボスが猫可愛がりした娘なのだ。もしかしたら…と、にっこりと笑う千彩の髪をそっと撫でた。
「ちー坊は…ハルさんが大好きなんやな」
「うん」
「ハルさんは?」
「はるもちさ大好きって。ちさのはるとやでって」
はにかむ千彩の表情が、いつか見せた美奈のそれにそっくりで。ジンと胸の奥を熱くする想いに、吉村は唇を噛む。
「ちー坊…お前はママそっくりになったな」
「ママ?」
「ママもな、そうやって笑ってた時があったんやで。お前は見たことないかもしれんけどな」
吉村の知る美奈という女は、とても脆く、繊細な女だった。
出会った頃は、もう既に壊れかけていた。まるで人形の如く放ったらかされていたまだ幼い千彩の面倒を懸命にみながら、吉村は必死で手を差し延べた。何度も一緒になろうと言った。この二人を自分が守っていくと決めていた。
けれど、美奈がその手を取ることはなく、残された千彩が自分の宝物になった。