Secret Lover's Night 【連載版】
夜中、までとはいかない時間帯。
薄明かりの電灯がいくつか並ぶ暗闇を抜け、目的地に辿り着いた。
「はい、どうぞ」
「おっ、お邪魔します」
「どうした?」
「ここ…電気は?」
恐る恐る尋ねるサナの頭をくしゃりと撫で、後ろ手に扉を閉めたハルが暗がりで八重歯を覗かせる。
「電気は、お金を払っていないので点きません」
「え?」
「ははっ。嘘」
手を伸ばしてカチリと照明のスイッチを入れると、突然サナが両手で顔を覆ってその場にしゃがみ込む。素早いその動作に目が追いつかず、ハルの視界からはサナが消える形となった。
「お?どないした?」
「まぶ…しい!消して!」
「あははっ。そりゃサナちゃんはモグラみたいな部屋に住んでたからなぁ」
言われた通りにスイッチをオフにし、くしゃくしゃとサナの頭を撫でながらハルは思う。この子は何故あんなところに居たのだろうか、と。
見つけた場所は、時々顔を出すキャバクラの入っているビルと、その隣のビルの間だった。
何気なく視線を遣ったそこに、白いドレスを着て雨の中蹲る「ナニカ」が居た。
声を掛けると跳ねるように振り向き、そして、何も言わず手を引いてあのビルへと導いた。
到底ひとが住むような場所ではないあの暗くて湿っぽいビルの中で、古いソファをベッドにモグラよろしく寝起きしていたのだ、この子は。
そこで、思考がプツリと途絶える。大切なことを思い出したのだ。
薄明かりの電灯がいくつか並ぶ暗闇を抜け、目的地に辿り着いた。
「はい、どうぞ」
「おっ、お邪魔します」
「どうした?」
「ここ…電気は?」
恐る恐る尋ねるサナの頭をくしゃりと撫で、後ろ手に扉を閉めたハルが暗がりで八重歯を覗かせる。
「電気は、お金を払っていないので点きません」
「え?」
「ははっ。嘘」
手を伸ばしてカチリと照明のスイッチを入れると、突然サナが両手で顔を覆ってその場にしゃがみ込む。素早いその動作に目が追いつかず、ハルの視界からはサナが消える形となった。
「お?どないした?」
「まぶ…しい!消して!」
「あははっ。そりゃサナちゃんはモグラみたいな部屋に住んでたからなぁ」
言われた通りにスイッチをオフにし、くしゃくしゃとサナの頭を撫でながらハルは思う。この子は何故あんなところに居たのだろうか、と。
見つけた場所は、時々顔を出すキャバクラの入っているビルと、その隣のビルの間だった。
何気なく視線を遣ったそこに、白いドレスを着て雨の中蹲る「ナニカ」が居た。
声を掛けると跳ねるように振り向き、そして、何も言わず手を引いてあのビルへと導いた。
到底ひとが住むような場所ではないあの暗くて湿っぽいビルの中で、古いソファをベッドにモグラよろしく寝起きしていたのだ、この子は。
そこで、思考がプツリと途絶える。大切なことを思い出したのだ。