Secret Lover's Night 【連載版】
智人との電話を終えた晴人は、電話を代わってもらえずガックリと肩を落とす恵介み向かってはぁーっと大きくため息を吐き出した。

「どないしたん?また何かやらかしよったんかー?智人」
「智とちゃう」
「ん?」
「今度はちぃや」

マイエンジェルが悪いことなどするはずがない!と、重い空気を壊すように、恵介はわざと頬を膨らせて見せた。

「姫、どうだった?」
「んー…あー…」
「なぁに?さすがのアタシでも、今すぐ飛行機は飛ばせないわよ」

わざとらしく大きく両手を広げて肩を竦めるマリも、そんなマリを「またそんなこと言う…」と嗜めるメーシーも、恵介と同様千彩の様子を気にかけていて。朝一で戻りたいと申し出た晴人に、誰一人として嫌な顔はしなかった。

「何かあった?」
「んー…」

ポンッと肩を叩くメーシーにグラスを差し出され、有難くそれを受け取ってから晴人は宙を仰いだ。


「アイツ、やっぱ引き取ろうかな」


離れた当初は、毎日寂しくて仕方がなかった。それを紛らわせるために仕事を詰め、同じチームの恵介やメーシーには随分と苦労をかけた。

漸くそれも落ち着きを取り戻し、寂しさを紛らわせるためではなくきちんと仕事に身が入るようになってきた。そんな矢先にこれだ。寂しさよりも、今度は心配で仕方がない。

「どうしたの?いったい。無事に見つかったんだろ?」
「あぁ、うん」

最初の件は、千彩を独りにした智人に非がある。けれど、智人は念を押したにも関わらずヘマをしでかし、更に叱られることを恐れて嘘を吐くような弟ではない。ということは、智人が晴人に語ったことは事実なのだ。

「ごめん。ちょっと電話してくる」

受け取ったグラスを再びメーシーに返し、晴人は重い腰を上げた。
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