Secret Lover's Night 【連載版】
ロビーへと続く廊下を歩きながらコールすると、慌てた様子で吉村が電話口へと出た。
『はいはいっ!吉村です!』
「すいません、遅くに。今大丈夫ですか?」
『大丈夫ですよ。ちー坊に何かあったんですか?なんぼ電話しても繋がらんかったから、俺もハルさんに電話しよう思うとったんですわ』
九州へ出張中の吉村も、やはり千彩の様子を気にかけていて。迷惑をかけていないか心配で何度か三木家に電話を入れたのだけれど、誰も出ないことに不安を募らせていた。
「あぁ、すいません。ちょっと両親が留守にしないといけないようになってしまって、弟が千彩と一緒にいるんです」
『あー、そうでっか。それなら良かったですわ。ご迷惑かけてませんやろか?』
「大丈夫です。千彩も弟に懐いてますから」
そこまで言い、晴人はすぅっと大きく息を吸った。
「あの、吉村さん…」
出来ることなら、このままそっとしておきたかった。千彩にしても吉村にしても、美奈の死は心に深い傷となって残っていることはわかる。他人の自分が掘り返して、嫌な思いはさせたくない。
けれど…
「千彩のお母さんって、もしかして…自殺ですか?」
押し殺すように小さく、けれどハッキリと届いた晴人の言葉に、吉村の心臓がドクンと大きく脈打った。
『えっと…それは…』
「すいません。思い出したくない話やと思うんですけど…」
『いや、ええんですけど…ちー坊、何かありましたか?』
千彩が自ら母親のことを語ったとは思えない。晴人の口ぶりからしてみても、何かあったと思う方が自然ではないだろうか。そして、吉村はそれに思い当たる節がいくつかあった。
「血を見たら、叫んで風呂場に駆け込んだみたいで」
『あぁ…それは…』
吉村が家に戻った時には、既に美奈は息を引き取っていた。バスルームから聞こえる千彩の悲痛な声に慌てて扉を開くと、そこには目を伏せたくなる現実が広がっていた。
『はいはいっ!吉村です!』
「すいません、遅くに。今大丈夫ですか?」
『大丈夫ですよ。ちー坊に何かあったんですか?なんぼ電話しても繋がらんかったから、俺もハルさんに電話しよう思うとったんですわ』
九州へ出張中の吉村も、やはり千彩の様子を気にかけていて。迷惑をかけていないか心配で何度か三木家に電話を入れたのだけれど、誰も出ないことに不安を募らせていた。
「あぁ、すいません。ちょっと両親が留守にしないといけないようになってしまって、弟が千彩と一緒にいるんです」
『あー、そうでっか。それなら良かったですわ。ご迷惑かけてませんやろか?』
「大丈夫です。千彩も弟に懐いてますから」
そこまで言い、晴人はすぅっと大きく息を吸った。
「あの、吉村さん…」
出来ることなら、このままそっとしておきたかった。千彩にしても吉村にしても、美奈の死は心に深い傷となって残っていることはわかる。他人の自分が掘り返して、嫌な思いはさせたくない。
けれど…
「千彩のお母さんって、もしかして…自殺ですか?」
押し殺すように小さく、けれどハッキリと届いた晴人の言葉に、吉村の心臓がドクンと大きく脈打った。
『えっと…それは…』
「すいません。思い出したくない話やと思うんですけど…」
『いや、ええんですけど…ちー坊、何かありましたか?』
千彩が自ら母親のことを語ったとは思えない。晴人の口ぶりからしてみても、何かあったと思う方が自然ではないだろうか。そして、吉村はそれに思い当たる節がいくつかあった。
「血を見たら、叫んで風呂場に駆け込んだみたいで」
『あぁ…それは…』
吉村が家に戻った時には、既に美奈は息を引き取っていた。バスルームから聞こえる千彩の悲痛な声に慌てて扉を開くと、そこには目を伏せたくなる現実が広がっていた。