Secret Lover's Night 【連載版】
そして、迷いに迷った言葉を押し出す。
「なぁ、お兄様に言うて俺んとこ帰って来るか?」
「はるのとこ?」
「おぉ。俺の傍におったらええやん」
ここに来るまで一週間、晴人自身も迷っていた。不安定だ、具合が悪いと聞かされ続けたこの一ヶ月。いくら仕事を詰め込もうと、千彩のことが心配でならなかった。
自分一人で何とか出来るとは思わない。それを考えれば、このままここに置いておく方が千彩のためになるだろう。ずっと傍に居てくれる智人が居て、柔軟に対応してくれる母、いざという時は頼りになる父が居る。そして、千彩を愛して、愛して、愛し続けている吉村が居る。
けれど、自分は一人ではない。
「何とかなる」と笑ってくれる親友と、女性にとびきり優しいフェミニストの友人、ワガママだけれど行動力抜群の女王様が居る。そして、そんな自分達を温かく見守ってくれる仲間が居る。
それを考えた時、今の状態の千彩を迎えても大丈夫なのではないだろうかと思えた。
「帰って来てええで」
「んー…」
当然大喜びで「帰るっ!」と返事をするとばかり思っていた千彩は、難しい顔で唸ってしまって。それに不安を感じた晴人なのだけれど、難しい顔をしないように一呼吸置いてそのまま俯いてしまった千彩と額を合わせた。
「俺の仕事は大丈夫やで」
「でも…」
「心配しぃな」
晴人の言葉は、千彩にとってはとても魅惑的な言葉で。本当ならば、すぐにでも頷いて晴人の元へ帰りたい。
けれど千彩には、簡単に頷けない理由があった。
「はる、あのね…」
まるで晴人の機嫌を窺うように遠慮気味に話し出した千彩に、晴人の不安は一気に加速した。
「ちぃ?」
急かしてはいけない。難しい顔をしてはいけない。それは十分わかっているのだけれど、晴人にはそこまで自分を制御する冷静さが残っていなかった。
「はる…怖い」
千彩がボソリと呟いた言葉に、不安に揺れていた晴人の抑えていた感情が一気に溢れた。
「俺…要らんか?ちぃにはもう俺は要らんか?」
「はる?」
「俺にはちぃがおらなあかんねん。でも、ちぃにはもう俺は要らんのか?」
必死に歯を食いしばるのだけれど、溢れ出した不安を呑み込むことはもはや叶わなかった。
「はる、あのね?」
「ちぃ…俺の傍におってや。そうやって約束したやろ」
「あの…ね」
「ちぃ…お願いやから。なぁ、お願いや」
痛いほどの強さで抱かれ、あまりの苦しさに千彩は身を捩って晴人の腕の中を抜け出そうとするのだけれど、どうにもこうにも叶わなくて。うっと呻き声を洩らすも、それでも晴人が千彩を抱く力を弱めることはなかった。
「なぁ、お兄様に言うて俺んとこ帰って来るか?」
「はるのとこ?」
「おぉ。俺の傍におったらええやん」
ここに来るまで一週間、晴人自身も迷っていた。不安定だ、具合が悪いと聞かされ続けたこの一ヶ月。いくら仕事を詰め込もうと、千彩のことが心配でならなかった。
自分一人で何とか出来るとは思わない。それを考えれば、このままここに置いておく方が千彩のためになるだろう。ずっと傍に居てくれる智人が居て、柔軟に対応してくれる母、いざという時は頼りになる父が居る。そして、千彩を愛して、愛して、愛し続けている吉村が居る。
けれど、自分は一人ではない。
「何とかなる」と笑ってくれる親友と、女性にとびきり優しいフェミニストの友人、ワガママだけれど行動力抜群の女王様が居る。そして、そんな自分達を温かく見守ってくれる仲間が居る。
それを考えた時、今の状態の千彩を迎えても大丈夫なのではないだろうかと思えた。
「帰って来てええで」
「んー…」
当然大喜びで「帰るっ!」と返事をするとばかり思っていた千彩は、難しい顔で唸ってしまって。それに不安を感じた晴人なのだけれど、難しい顔をしないように一呼吸置いてそのまま俯いてしまった千彩と額を合わせた。
「俺の仕事は大丈夫やで」
「でも…」
「心配しぃな」
晴人の言葉は、千彩にとってはとても魅惑的な言葉で。本当ならば、すぐにでも頷いて晴人の元へ帰りたい。
けれど千彩には、簡単に頷けない理由があった。
「はる、あのね…」
まるで晴人の機嫌を窺うように遠慮気味に話し出した千彩に、晴人の不安は一気に加速した。
「ちぃ?」
急かしてはいけない。難しい顔をしてはいけない。それは十分わかっているのだけれど、晴人にはそこまで自分を制御する冷静さが残っていなかった。
「はる…怖い」
千彩がボソリと呟いた言葉に、不安に揺れていた晴人の抑えていた感情が一気に溢れた。
「俺…要らんか?ちぃにはもう俺は要らんか?」
「はる?」
「俺にはちぃがおらなあかんねん。でも、ちぃにはもう俺は要らんのか?」
必死に歯を食いしばるのだけれど、溢れ出した不安を呑み込むことはもはや叶わなかった。
「はる、あのね?」
「ちぃ…俺の傍におってや。そうやって約束したやろ」
「あの…ね」
「ちぃ…お願いやから。なぁ、お願いや」
痛いほどの強さで抱かれ、あまりの苦しさに千彩は身を捩って晴人の腕の中を抜け出そうとするのだけれど、どうにもこうにも叶わなくて。うっと呻き声を洩らすも、それでも晴人が千彩を抱く力を弱めることはなかった。