Secret Lover's Night 【連載版】
「レイちゃんの時もそんな顔しとった」
「玲子の話すんな」
「あん時はさすがに反対出来んかったもんなー」

晴人の過去の恋人で、智人が唯一反対出来なかった人物。それが、年上の幼なじみの玲子で。

昔から玲子に好意を寄せていた智人は、反対することも賛成することも出来ずにこうして悠真と二人で自室に籠ったのだ。

「レイちゃん元気なん?」
「知らん」
「知らんて…家、隣の隣やん」
「こっち帰って来てから、一回しか会うてへん」
「うわ…にーちゃんも罪な男やなぁ」

いくら晴人に憧れる二人でも、さすがにそこにまで憧れは抱かない。寧ろ幼なじみとの件があってから、智人は晴人のそういった部分を酷く嫌っていた。

「玲子が可哀相や」
「慰めてやったら良かったやん」
「あほか。俺は晴人の弟やぞ」
「だから?」

だから何だと言うのだ。いくら兄弟でも個人だろ?悠真の一言には、そんな思いが乗せられていた。


「会いたくないやろ。あいつ、捨てられて泣いて帰ってきたんやから」


十分にその思いを汲み取った智人は、それでも尚否定した。思いやり過ぎて自分を殺してしまう。自由気ままだのワガママだの散々言われるけれど、智人とてそんな部分ばかりで構成されているわけではない。

「そうやってするからギターに逃げるしかなくなんねん」
「ええんや。俺はギターが恋人や」
「うわっ、寂しい奴」
「何言うてんねん。ギタリストの鑑やないか」

そんな智人の性格を知っていてわざと茶化した悠真は、バンド活動だけならずプライベートでも色んな思いを共有してきた智人の親友で。晴人にとっての恵介と同じく、智人にとっての悠真も支え、支えられの必要不可欠な人物だと言える。

「にーちゃん泊まるんかな?」
「やろな」
「ほな俺も泊まろっと。今日は四人で寝ようや」
「あほか。あのロリコンがそんなこと許すわけないやろ」

勿論、悠真も冗談のつもりで、智人もそれをわかっている。そんな無駄なやり取りが、今の智人には有難かった。
< 229 / 386 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop