Secret Lover's Night 【連載版】
「どないしてん、急に」
「ライブ、楽しかった?」
「え?あー…」
「智人なぁ、ちーちゃんおらんからいっぱい失敗したんやで」
「えー!だからちさも行くって言ったのに!」
「あほか。要らんこと言うな。お前が居らんかったからちゃうわ。たまたま調子が悪かったんや」
「嘘つけ―」
「うそつけー」

からかう二人の頭を順にパシンッ、パシンッと叩き、智人は体を起して千彩のお尻をパンッと叩いた。

「風呂入るぞ。着替え取って来い」
「はーい!」

元気よく返事をして部屋を飛び出して行った千彩を見送り、悠真は立ち上がって準備を始めた智人をチラリと見上げた。

「何や」
「にーちゃんおるんやろ?」
「起きる頃には千彩が眠なってまう」
「せやかて…起こしたら起きるんちゃうん?」
「起きるか。どうせロクに寝てなかったんやろ」

久しぶりに会った晴人は、いつもに増して疲れた顔をしていて。仕事を詰め込み過ぎて寝る暇も無いと言うよりは、少しでも時間を使いたくてわざと仕事を詰め込んだ。そんな感じがした。

そんな晴人が千彩を傍に置けば、安心してどっぷりと眠りに浸かるのは必至。いつ頃から眠っているのかはわからないけれど、そう容易く起きるとは思えなかった。

「起きたらにーちゃん怒るんちゃうん?」
「知るか」
「ともとー、出来た!」
「よし。行くぞ」
「はーい!」

嬉しそうに返事をする千彩は、そんな大人の事情などというものは知らない。「あーあ」と洩らす悠真に手を振り、智人の後を追ってご機嫌にバスルームへと向かって行った。
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