Secret Lover's Night 【連載版】
玲子に対する想いと、千彩に対する想い。
それは、同じようで違う、違うようで同じ想い。

言葉にするのは難しいのだけれど、明らかな違いは「恋心かそうでないか」だろうか。その他は、曖昧で智人自身にもよくわからない。


「俺は、いっつもお兄に負けてばっかや。ってか?」


いつの間にか部屋に入って来た悠真が、ギシリと音を立ててベッドへと腰かけた。あの時と同じく、智人は何も語らない。ただ違うのは、悠真が少し饒舌になったことだ。

「にーちゃんはホンマいつでもカッコええな。ええなぁ。俺もあんなんなりたいわ」
「・・・」
「レイちゃんのことな、謝ってたで」
「・・・」
「置いてったら、智人に持ってかれる思ったんやて。レイちゃんのこと、盗られたなかったんやって。あのにーちゃんがやで?智人がにーちゃんに勝てるわけないのにな」
「お前…ケンカ売りに来たんか?」

低く押し出した智人の声にぷっと噴き出し、悠真は知らぬ顔をして言葉を続けた。

「ちーちゃんのことも、盗られるんちゃうかって不安やったんやて。ちーちゃん、あんなに「はる!はる!」言うてんのにな」
「・・・」
「お前はにーちゃんには勝てへんて思ってるんかもしれんけど、お前さえ途中で諦めへんかったら勝てるんちゃうか?」

おおよその結果が見えると、そこで諦めて方向を変えてしまう。

こっちの道はどうか。
あっちの道はどうか。

色々と歩いてはみるのだけれど、いつだって結果は同じで。諦めていないものは何か。たった一つ残ったものは、再び晴人の背を追い始めて最初に選んだ道だった。
< 250 / 386 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop