Secret Lover's Night 【連載版】
想い合う心
父が戻って暫くしてふと目を覚ました千彩は、首元まで上げられた布団を押し退けてふぅっと大きく息を吐いた。
そして、隣で眠る晴人を起こさないようにゆっくりと体を起こし、何度か深呼吸をして呼吸を整える。
晴人の元に戻るまでに、自分には出来るようにならなければならないことかいくつかある。
料理に掃除に洗濯といった家事全般。庭の手入れも出来るようになれば、晴人に綺麗な花を見せてあげられる。後は元気になればそれで良い。と晴人の両親や吉村には言われているのだけれど、智人はそうは言わなかった。
「湯船に浸かれ。布団を肩までかぶれ」
風邪を引くから、と毎日口煩く言われる。わかってはいるのだけれど、あと一歩がどうしても出ない。
何も怖くない。
大丈夫。
何度そう言い聞かせたとて、胸の奥にある恐怖心がそうはさせてくれなかった。
「頑張るって約束したもん。ちさ、頑張るもん」
眠い目を擦りながらギュッとぬいぐるみを抱きしめて、千彩は決意を新たにする。そんな千彩を、眠っていたはずの晴人の腕が捕らえた。
「ひゃっ!」
「ん…どないした?ちぃ」
「びっくり…した」
「あぁ…ごめん」
まだ半分夢の中にいる晴人は、眠そうに返事をして千彩を引き寄せる。それに身を任せ、千彩は再びゴロンと横になった。
「はる、後ろから手が出てくると怖いよ」
「んー…」
「どっかに連れて行かれるって思う」
「んー…せやな。ごめん」
背後から不意に伸びてくる手には、未だ慣れない。考えてみれば嫌な思い出しかない…と、千彩が珍しくため息を吐いた。
「幸せ逃げてまうんちゃうんか?」
「…うん」
「どないしたんや」
「あの…ね」
言いかけて、千彩は言葉を切った。胸の奥には、確かに伝えたいことがある。
けれど、それが上手く言葉にならない。
そして、隣で眠る晴人を起こさないようにゆっくりと体を起こし、何度か深呼吸をして呼吸を整える。
晴人の元に戻るまでに、自分には出来るようにならなければならないことかいくつかある。
料理に掃除に洗濯といった家事全般。庭の手入れも出来るようになれば、晴人に綺麗な花を見せてあげられる。後は元気になればそれで良い。と晴人の両親や吉村には言われているのだけれど、智人はそうは言わなかった。
「湯船に浸かれ。布団を肩までかぶれ」
風邪を引くから、と毎日口煩く言われる。わかってはいるのだけれど、あと一歩がどうしても出ない。
何も怖くない。
大丈夫。
何度そう言い聞かせたとて、胸の奥にある恐怖心がそうはさせてくれなかった。
「頑張るって約束したもん。ちさ、頑張るもん」
眠い目を擦りながらギュッとぬいぐるみを抱きしめて、千彩は決意を新たにする。そんな千彩を、眠っていたはずの晴人の腕が捕らえた。
「ひゃっ!」
「ん…どないした?ちぃ」
「びっくり…した」
「あぁ…ごめん」
まだ半分夢の中にいる晴人は、眠そうに返事をして千彩を引き寄せる。それに身を任せ、千彩は再びゴロンと横になった。
「はる、後ろから手が出てくると怖いよ」
「んー…」
「どっかに連れて行かれるって思う」
「んー…せやな。ごめん」
背後から不意に伸びてくる手には、未だ慣れない。考えてみれば嫌な思い出しかない…と、千彩が珍しくため息を吐いた。
「幸せ逃げてまうんちゃうんか?」
「…うん」
「どないしたんや」
「あの…ね」
言いかけて、千彩は言葉を切った。胸の奥には、確かに伝えたいことがある。
けれど、それが上手く言葉にならない。