Secret Lover's Night 【連載版】
『はい』
「あっ、俺」
『何や。今忙しいねん。ホテル帰ったら説明するから』
「ちーちゃん捜してるんやろ?見つかったで」
『は?何でお前が…って、見つかった!?』
「おぉ。今一緒におる。にーちゃんとこ連れて行ったらええ?」
『何でお前が!?てか、今どこにおんねん!すぐ迎えに行くから場所教えろ!』
「えー…」
『悠真!』
「あー、はいはい。わかりましたよ」

渋々自分達の居場所を告げた悠真は、ぶぅっと頬を膨らませて電話を切った。せっかくこのまま連れて帰ってにーちゃんに褒めてもらおうと思ったのに!と、こっちもこっちで千彩を笑えないほど子供だった。

「ちーちゃん、あっこで待ってよっか」
「え?」
「ともとが迎えに来るって」

繋いだ手を大きく振りあがら駅前まで歩き、悠真は大きな窓のあるファミレスの前で立ち止まった。

どこに居るかは知らないけれど、30分もあれば来るだろう。ここならば大声を出して騒ぐこともしない。そう判断してのことだった。

「お腹空いてへん?」
「空いた!」
「ほな、ここでご飯食べて待ってよ?俺もお腹ペコペコ」
「うん!」

大きく頷いたものの、家で待っているだろう晴人と恵介のことを思い出して千彩は慌てて首を横に振った。

「はるとけーちゃんが待ってるから、早く帰ろう?」
「大丈夫。二人にはともとが言ってくれるから」

そんな約束は交わしてないけど。とは言わずに、悠真は手を引いて大きなガラス扉を引く。いらっしゃいませー!と駆け寄ってきたウエイトレスに二人だと告げ、後で何人か来るから…と少し広めの席へと案内してもらった。

「何食べるー?」
「んー…」
「あっ、ちーちゃん!プリンあるで!」

どうしても晴人と恵介のことが気になる千彩は、大好きなプリンという単語を聞いても浮かない表情のままで。それにやれやれ…と肩を竦め、悠真は手を伸ばして千彩の頭をそっと撫でた。

「大丈夫。俺と智人が一緒に謝ったるから」
「でも…」
「だいじょーぶ!」

ニッと笑う悠真を見て、漸く千彩も表情を緩ませた。

「じゃあ、ご飯食べる!」
「プリンも?」
「プリンも!」

笑顔の戻った千彩を見てホッと胸を撫で下ろし、悠真はメニュー片手に店員を呼び寄せた。智人の元に居た間に千彩がよくリクエストしていたオムライスを二つ頼み、好物のプリンと自分用のコーヒーも忘れずに。
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