Secret Lover's Night 【連載版】
「何考えてる?」
「んー…」
「俺は、君がちゃんと姫を叱れるのか心配してる」
端から叱る気などない。自分が放っておいたのが悪かったのだ。周りに叱られるのは自分であって、千彩ではない。
晴人のそんな思いは、当然メーシーにはお見通しで。丁寧に皺を伸ばして干されてある洗濯物を指先で弾きながら、メーシーは夜空にふぅっと煙を吐き出した。
「今回のことは、姫が悪いよ」
「いや…でも…」
「いつまでも小学生じゃないんだ。ちゃんとわからせないといけない。自分がどれだけの人を心配させたのかってことをね」
「まぁ…」
「今回は無事だった。でも、次が無いとも、次も無事だとも限らない。その時後悔しても遅いんだよ」
メーシーの意見は尤もだ。
けれど、千彩に寂しい思いをさせていたのは自分。
晴人の中ではどうしてもそれが引っかかって。同じように煙を吐き出しながら、干された洗濯物を一箇所に纏めた。
「俺…あいつ連れて地元帰ろかな」
「仕事はどうすんのさ」
「あっちにもJAGあるやろ。そこに移籍するわ。親父もそうせぇって前から言うてんねん」
「俺は?」
マリにジュースを渡し終えた恵介が、背後から参戦する。手を伸ばし、目指すはタバコ…ではなくて、洗濯物だった。
「お前はこっちおったええがな」
「俺を捨てるんか?」
「捨てるって…」
「そりゃ確かに、嫌や言うとるお前を強引にこっち連れて来たんは俺やで?玲子まで連れてこさしてあんなことなってもて…悪いことしたとは思ってる。でも、だからって俺置いて帰ることないやん」
両手に洗濯物を抱え、恵介は振り向きざまに悲しげに笑う。
「お前が帰るんやったら、俺も帰る。もう実家は入れてもらわれへんやろから、暫くせーとんとこで世話になるけどな。おっちゃんとおばちゃんに言うとってや?」
元々、恵介の両親は二人の上京に大反対で。商売を営む家の長男である恵介が家を離れるなど、言語道断!と何度も父親に殴られては三木家へ避難してきていた。
それでも無理やりに上京し、最初の何年かは頻繁に実家に帰ることで何とか機嫌を取ってきた。帰らなくなってしまった今は、機嫌どころの話ではないけれど。
そんな恵介に、やはり晴人は苦笑いで返すしかなくて。短くなったタバコを灰皿に押し付け、難しい表情のままのメーシーに向き直った。
「んー…」
「俺は、君がちゃんと姫を叱れるのか心配してる」
端から叱る気などない。自分が放っておいたのが悪かったのだ。周りに叱られるのは自分であって、千彩ではない。
晴人のそんな思いは、当然メーシーにはお見通しで。丁寧に皺を伸ばして干されてある洗濯物を指先で弾きながら、メーシーは夜空にふぅっと煙を吐き出した。
「今回のことは、姫が悪いよ」
「いや…でも…」
「いつまでも小学生じゃないんだ。ちゃんとわからせないといけない。自分がどれだけの人を心配させたのかってことをね」
「まぁ…」
「今回は無事だった。でも、次が無いとも、次も無事だとも限らない。その時後悔しても遅いんだよ」
メーシーの意見は尤もだ。
けれど、千彩に寂しい思いをさせていたのは自分。
晴人の中ではどうしてもそれが引っかかって。同じように煙を吐き出しながら、干された洗濯物を一箇所に纏めた。
「俺…あいつ連れて地元帰ろかな」
「仕事はどうすんのさ」
「あっちにもJAGあるやろ。そこに移籍するわ。親父もそうせぇって前から言うてんねん」
「俺は?」
マリにジュースを渡し終えた恵介が、背後から参戦する。手を伸ばし、目指すはタバコ…ではなくて、洗濯物だった。
「お前はこっちおったええがな」
「俺を捨てるんか?」
「捨てるって…」
「そりゃ確かに、嫌や言うとるお前を強引にこっち連れて来たんは俺やで?玲子まで連れてこさしてあんなことなってもて…悪いことしたとは思ってる。でも、だからって俺置いて帰ることないやん」
両手に洗濯物を抱え、恵介は振り向きざまに悲しげに笑う。
「お前が帰るんやったら、俺も帰る。もう実家は入れてもらわれへんやろから、暫くせーとんとこで世話になるけどな。おっちゃんとおばちゃんに言うとってや?」
元々、恵介の両親は二人の上京に大反対で。商売を営む家の長男である恵介が家を離れるなど、言語道断!と何度も父親に殴られては三木家へ避難してきていた。
それでも無理やりに上京し、最初の何年かは頻繁に実家に帰ることで何とか機嫌を取ってきた。帰らなくなってしまった今は、機嫌どころの話ではないけれど。
そんな恵介に、やはり晴人は苦笑いで返すしかなくて。短くなったタバコを灰皿に押し付け、難しい表情のままのメーシーに向き直った。