Secret Lover's Night 【連載版】
Chapter 4 ユメイロ

 真夜中の憂鬱

時刻は、午前0時を少し回ったところ。
薄暗い室内で大きな壁掛け時計を見上げ、晴人は唸った。

「もう良くない?」

何度目かになる言葉を吐き出し、一口分だけ中身の残ったグラス傾ける。けれど、その言葉を受け取ったはずの相手は、素知らぬ顔をしてヒラリと手を上げた。

「すみませーん。同じのをもう一杯」

はぁ…と深いため息を吐く晴人の肩に寄り掛かり、じっと見上げる女。それを何とか避けようにも、残念なことにそこはバーカウンターで。椅子から落ちてケガでもされたら堪らない。と、諦めたフリをした晴人はそっと視線を逸らした。

「ねぇ、ハル」

逸らされた視線を戻そうと、女は甘えた声で名を呼ぶ。聞こえないフリをした晴人は、運ばれて来たグラスを受け取って再びため息を吐いた。


切欠は、メーシーの意地の悪い一言だった。


「王子は絶対に君を抱かないよ。試してみればいいさ」


いつものようにふふっと軽く笑いながらそんなことを言われてしまえば、モデルとて引くに引けなくなる。プライドが高いのは、モデルのお約束。何もマリだけが特別なわけではない。

結局食事に付き合う羽目になり、一時間だけ…と入ったバーで数時間。あれよあれよという間に日付を跨いでしまった。
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