Secret Lover's Night 【連載版】
「何か…ハルじゃない」
「ん?」
「皆の話と違うじゃん」
「皆?」
「リエさんとか小春さんとか。皆、ハルはクールで頭が良くて、すっごくイイオトコだって言ってたのに」

不満げなレンに苦笑いで「あー…」と返し、立ったままうとうとしかかっている千彩の肩を抱き直して晴人はレンと視線を合わせた。

「小春はまぁ…あれやけど。リエは知ってるはずなんやけどな」
「何で?」
「俺がリエと別れた原因、コイツやから」

今まで誰に問われても決して認めなかった事実。噂が広まれば仕事に影響する。自分ではなくて、リエの仕事に。だからこそ、最後の優しさだと思って晴人は何も語らずにいたのだ。

「誘えば抱くって誰かに聞いたんやろ?そうでもないんやけどな」

よくもまぁヌケヌケと…と、自分でも思わなくもない。誘われれば誰でも抱いたし、誰でも彼女にしてやった。まぁ、乗り換えのタイミングが合えば、の話だけれど。

「私はハルのタイプじゃなかったってこと?」
「んー…」
「ハッキリ言ってよ。事務所とか気にしないで」
「そう?ほな、遠慮無く。タイプやないし、撮っててもおもんない。MARIとは雲泥の差や」
「なっ…!」

「言い過ぎなんじゃねーの?王子」

ポンッと肩を叩かれて振り向くと、そこには相変わらず怪しげな笑みを携えたメーシーが居た。

あぁ、これは何か面倒なことになりかけている。

察した晴人は、自分の腕の中で立ったまま眠ってしまった千彩をよいしょと抱え上げてその無事を主張した。

「無事で良かった。ケイ坊が電話かけてきてさ」
「すんませんな、こんな夜中に」
「まったくだよ」
「女王様にもよろしくお伝えください」

軽く頭を下げたものの、よくよく考えてみれば事の元凶はこの偽フェミニストで。あのなぁ…と言いかけ、やけに真面目なメーシーの表情にそれを呑み込んだ。

「だから言ったろ?無駄だって」
「…ふんっ」

出る杭は手早く打ってしまおう。しかも、二度と出ないようにコテンパンに。

メーシーのそんな考えが、晴人には手に取るようにわかってしまって。あー…面倒くさい。小さくそう呟き、完全に力の抜けてしまった千彩を抱え直す。

「メーシー、さっさとな?コイツ重いんやから」
「わかってるよ」

何をそんなにも怒っているのか。そんなことは、少し考えれば直ぐにわかることだった。
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