Secret Lover's Night 【連載版】
翌朝、やはり先に目を覚ましたのは晴人で。重い瞼を持ち上げてゆっくりと上体を起こすと、だらんと左腕だけを下した恵介の姿が見えた。
オフホワイトのカーテン越しの空は、まだ薄暗い。
恵介が酔い潰れる度に眠るこのソファには、それぞれに思い入れがある。
上京して初めてした、大きく、高額な買い物。
あれでもない、これでもないと何週間もかけて店を回り、もう行く店が無いと思った時にふと目に入った小さなインテリアショップ。そっと扉を引くと、ランプの灯りだけの薄暗く狭い店内に、このソファがドンと置かれていた。
「これ!」
同時に声を上げ、そして同時に噴き出した。
予算よりも随分と高額な商品だったけれど、お互いの心が「これにするんだ!」と譲らなかった。
結局、オーバーした分は恵介の貯金から捻出し、クリーニングをして運んでもらうまでに2週間。2ヶ月近くかかって漸く手にしたお気に入り。初めて搬入した部屋は、リビングの殆どをこのソファが占めていた。
「アホちゃう、あんたら」
初めて玲子がそれを見た時、何とも表現し難い呆れた表情でそう言っていたような気がする。
テーブルに並んだ空き缶を眺めながら、まだ鈍い頭でぼんやりと過去を思い出す。
楽しいばかりではなかった。
ケンカもしたし、絶望したこともある。
けれども、晴人にとって恵介は生涯の友であり、玲子はやはり幼なじみの「れいちゃん」で。
思い出すのは、細い目をさらに細くさせて笑いながら右手を差し出す制服姿の恵介と、夕日に染まる制服姿の玲子の横顔。きっと、それは何年経っても変わらないものなのだと思っている。
オフホワイトのカーテン越しの空は、まだ薄暗い。
恵介が酔い潰れる度に眠るこのソファには、それぞれに思い入れがある。
上京して初めてした、大きく、高額な買い物。
あれでもない、これでもないと何週間もかけて店を回り、もう行く店が無いと思った時にふと目に入った小さなインテリアショップ。そっと扉を引くと、ランプの灯りだけの薄暗く狭い店内に、このソファがドンと置かれていた。
「これ!」
同時に声を上げ、そして同時に噴き出した。
予算よりも随分と高額な商品だったけれど、お互いの心が「これにするんだ!」と譲らなかった。
結局、オーバーした分は恵介の貯金から捻出し、クリーニングをして運んでもらうまでに2週間。2ヶ月近くかかって漸く手にしたお気に入り。初めて搬入した部屋は、リビングの殆どをこのソファが占めていた。
「アホちゃう、あんたら」
初めて玲子がそれを見た時、何とも表現し難い呆れた表情でそう言っていたような気がする。
テーブルに並んだ空き缶を眺めながら、まだ鈍い頭でぼんやりと過去を思い出す。
楽しいばかりではなかった。
ケンカもしたし、絶望したこともある。
けれども、晴人にとって恵介は生涯の友であり、玲子はやはり幼なじみの「れいちゃん」で。
思い出すのは、細い目をさらに細くさせて笑いながら右手を差し出す制服姿の恵介と、夕日に染まる制服姿の玲子の横顔。きっと、それは何年経っても変わらないものなのだと思っている。