Secret Lover's Night 【連載版】

 少女の始まり

「あの子親に捨てられたんだって」

と、誰かが言った。


「あの子売られたらしいよ」

と、また違う誰かが言った。


誰かの名前が何かなんて、そんなことあたしは知らない。
そんなこと、あたしにはどうだっていい。

だって、誰もあたしの名前を呼んではくれない。


「ちーちゃん」

か細い声でそう呼んでくれたママは、あたしを置いてどこか遠くの世界に行ってしまった。


「お前の名前は、千を彩るって書いて千彩や」


そう教えてくれたおにーさまは、いつまで経っても迎えに来てくれない。


あたしは独りぼっちだ。
寂しくても悲しくても、あたしは独りぼっち。


友達なんていない。兄弟もいない。
ずっとずっと、ママと二人。

ずっとずっと、大好きなママの傍に居た。
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