Secret Lover's Night 【連載版】
「わー!」
「ケイ、行け!」
「よっしゃー!」

勢い良く倒れ込む千彩と、晴人の言葉でそこへ駆け寄って千彩に白い羽根を浴びせる恵介。

そして、つい数秒前の言葉を忘れて楽しそうにじゃれ合う千彩の表情を、一瞬たりとも逃がさぬようにカメラに収める晴人。

今までの晴人からは到底考えもつかないような撮影スタイルに、その場に居た全ての人が目を瞠る。

「ありゃー。あれは完全に王子が惚れ込んでるね。ね?所長」
「そう…みたいだな」
「意外だな。ああゆうのが好きだったんだ」
「まぁ…いいんじゃないか?これを機にあの子を専属モデルにして…」
「王子を落ち着かせようって魂胆?まっ、それもいいかもだけど」

はしゃぐ三人を眺めながら、メーシーと織部も気分を和ませた。


「けーちゃん大好きー!」


パシャリと切られるシャッターの音に、今度はそのまま晴人へと両手を伸ばした。

「はる大好きー!」

カメラを構えていても、晴人が笑ってくれているのがわかる。千彩にはそれがとても嬉しくて。散らばった羽根を寄せ集めて、反撃だ!と言わんばかりに恵介の上へとそれを舞わせた。

「やったなー!」
「きゃー!」

ふわりと舞う羽根の中で、きゃーきゃーとはしゃぎながらじゃれ合う二人。

それ自体も千彩にとっては楽しいのだけれど、何より、晴人が楽しそうに何度もシャッターを切ってくれることが嬉しかった。


そうしてじゃれ合うこと数十分。

息が上がってきた晴人が、カメラを置いて二人に声を掛ける。

「よし。ちぃもケイもお終いや」
「えー!」
「えー!」

終了の声に、千彩は不満げに頬を膨らせる。ふと隣を見ると、同じように頬を膨らせた恵介が居て。ぷっと噴き出すと、晴人の手がポンと頭に乗った。

「ご苦労さん」
「もういいの?」
「ありがとう、千彩」
「えへへっ。どういたしまして」

普段「ちぃ」と呼ばれるものだから、「千彩」と呼ばれるのが少しくすぐったい。そのまま髪を滑る晴人の手を取り、ピタリと頬に寄せて瞼を閉じた。
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