Secret Lover's Night 【連載版】
けれど、未だ甘えの抜けない千彩がそのまま晴人の両手を掴んでグッと引き寄せて寝転んだ。

同時に、解けた胸元のタオルがハラリと腰あたりに落ちる。

「こらこら。離して」
「イヤー」
「嫌ちゃうがな」
「イヤイヤー」

千彩が首を振る度に、揺れる豊かな膨らみ。白い体の下で広がる黒い髪がやけに扇情的で。

朝から勘弁してくれ…と、思わずため息をついた晴人を、男ならば誰も咎めはしないだろう。


「お取り込み中悪いんやけどなー、朝メシ出来たで?」


救世主は、やはり恵介で。

その言葉に納得は出来ないものの、助けになったことは否めない。

その声にバッと手を離し、千彩は起き上がって駆けようとする。その腕を掴み、脱力した晴人がタオルを差し出した。

「千彩さん、お願いやから服を着てください」
「ご飯…お腹空いた!」
「ご飯も大事やけどな、女の子がパンツ一枚でちょろちょろしてたあかんわ」
「んー。わかったー」

差し出されたタオルを胸元に巻き付けペタペタとクローゼットに歩み寄ると、千彩はカラカラと扉を開いてそこに顔を突っ込む。その姿に笑いを零す恵介を見ながら、晴人は思った。


兄貴か、俺らは、と。


言葉にこそしなかったけれど、どうにもその感じは拭い切れない。

だからまだ…なのだ。と、千彩と自分の想いの違いに緩く頭を振って、哀れな方向へと向かおうとする思考を止めた。

「けーちゃん、どれにするー?」
「せやなぁ、これは?」
「これ?はるー、これはー?」

そんなことはお構い無しに、恵介の選んだ洋服をあてて見せる千彩。それに一度コクリと頷き、晴人はパジャマ代わりにしていたTシャツを脱ぎ捨てた。

「あらー。相変わらずいいお体で」
「お前と違って鍛えてるからな」
「さすが。モテる男は違うってか」
「あー!はるも裸ー」

ペたりと引っ付いた千彩の頭を撫でながら、自分の着替えをクローゼットから引っ張り出す。そして、サワサワと腹筋辺りを撫ぜる千彩の手を取り、窘めた。

「男の体を不用意に触らなーい」
「なんでー?」
「お前ねぇ…危機感ってもんを持った方がええよ?」
「えー?ききかん?」

わからないならば…と、手を引いてベッドに押し倒す。どうも理解力に欠けている千彩には、こうするのが一番だと思ったのだ。


「こうゆうこと。わかる?襲われても知らんよ?」


そして、後悔した。

「誰が?」
「ちぃが」
「誰に?」
「俺に」
「はるに?いいよ?」
「はぃ?」
「ちさはるのこと大好き」

首元に絡み付いた千彩に、見事に引き寄せられた晴人が覆い被さる。それを見て、恵介が笑い声を上げるまでに数秒。

いつまでもつだろう…と、複雑な顔をした晴人が項垂れた。
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