Secret Lover's Night 【連載版】
「あの子…私に言ったの。自分は何も持ってないから、晴は私にはあげられないって。そんなはずないわ。親だって兄弟だっているだろうし、友達だっているはずだもの。それなのに晴の家に居座って…私なんて家さえ教えてもらえなかったのよ!?半年も付き合ってたのに…」

そんな風にしか思えないリエを、心底「可哀相な女だ」と思う。もう少し素直に相手を想えたならば、また結果は違ってきたかもしれないのに、と。

「だから騙されてるって?姫が嘘吐いてるって?」
「だって佐野さんもおかしいと思わない?晴以外何も持ってないなんて絶対変よ!」
「そっかな…」

少し思案してみるも、そんな風には思えない。少なくとも自分の目に映った千彩は、純粋で、素直で、バカ正直で…男を騙すような、そんな計算が上手く出来るような女だとは到底思えない。

それに、相手は「あの」晴人なのだ。

「じゃあさ、リエちゃんは姫の何を知ってる?」
「よく…知らないけど」
「よく知らないのにそんな風に言っちゃうのはどうだろ」
「だって…」
「あの子、ホントに何も持って無いかもよ?俺も詳しく聞いたわけじゃないから、よく知らないって言ったらそうなんだけど。実際、服も靴も全部ケイがプレゼントしたって言ってたし、メイク用品は俺がプレゼントしたしね」
「嘘…」
「ホントだよ?俺が嘘吐いても何も得しない」

軽い調子で両手を広げて肩を竦めると、リエは不機嫌に顔を顰めた。

嗚呼、美人が台無しだ。と、やはり第三者には余裕がある。

「俺、リエちゃんには悪いんだけど…王子と姫はお似合いだと思うんだよね」
「佐野さんは…私と晴とじゃ不釣り合いだって言いたいの?あんな子供の方が晴と釣り合うって」
「違うよ?そうゆうんじゃなくてさ」
「じゃあ、何?」

悔しそうに顔を歪めるリエは、涙よりも千彩への妬みだろう感情を優先していて。これだから大人は…と、ふぅーっと音に出来なかった言葉を吐き出した。

「そうゆうとこだよ、そうゆうとこ。あの子ならきっとそんな風には言わないんじゃないかな。会ってきたならわかると思うんだけど、あの子は人を否定したり見下したりしないと思うよ?きっと」
「だからそれが騙されてるって…」
「可哀相だよ、リエちゃん。何でそんな風にしか思えないかな」

言葉に詰まり唇を噛んだリエの元へと一歩近付き、メーシーは嫉妬で歪んでしまったその顔をじっと見つめた。
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