君に夢中で恋してる*
「えっ…!?」
椎名の動きがピタリと止まる。
少し間を置いた後、フルフルと首を左右に振った。
「い、いいよいいよ!!家まで一緒に…だなんて、迷惑かけちゃうから…。」
「そんなことないよ。雷も鳴ってるし、雨だって…降りそうだからさ。」
「で、でも…一人で帰れるから大丈夫だよ…。折り畳み傘も持ってるし…。」
そう言って、バッグの中に手を入れた椎名だったけど、すぐに“あれ…?”という声が零れる。
どうやら、傘がなかったみたいだ。
「お、おかしいな…。夕立ちが来るかもしれないと思って、中に入れて来たはずなのに……。」
バッグを見ながら溜め息を零す椎名の手を、そっと握った。
「俺、傘持ってるから…一緒に帰ろ?帰る方向だって、同じなんだし。」
「でも……」
申し訳なさそうにしている椎名の手を引いて、空き教室を出る。
そのまま、ゆっくり歩き始めた。
少し強引かもしれないけど、雷が苦手な椎名を放っておけないし…
一分でも一秒でも長く、椎名を見ていたいって思うんだ…。
ひょっとして…
俺、椎名に恋…してるのかな…。