君に夢中で恋してる*

座れるといいな…。


そう思いながら、電車に乗り込んだけれど、あいにく座席は全て乗客で埋まっていた。


うぅ…。
まあ、仕方ないか…。


ちょうど、帰宅ラッシュの時間帯だもんね…。


座るのを諦めて、乗降口の付近に邪魔にならないようにして立った。


ゆっくりと走りだす電車。


最初は流れていく夕暮れの景色を見ていた私だったけれど……


「ふぁ……」


またしても欠伸が零れる。


ね、眠い…。


睡魔が襲ってきて、瞼が次第に重くなっていく。


あぁ…。
このまま眠っちゃいそう。


そう思いながら完全に目を閉じてしまった。


しばらく、電車に揺られながら、心地よく眠っていた私だったけれど、次の瞬間…。



ガタンッ…。


車体が少し大きく揺れる。


その反動で、夢の中に旅立っていた意識が引き戻されるのと同時に、体がバランスを崩して前のめりになるのを感じた。


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