君に夢中で恋してる*

大きな声で呼び止めたせいか、日向君は驚いた表情を浮かべる。


「椎名?」


首を傾げる日向君に、私はガバッと頭を下げた。



「日向君っ、ごめんなさいっ!」


「えっ?」


「花火大会の夜、あんなこと言って…ごめんなさいっ!」


「あんなことって…?」


日向君の声は少し戸惑い気味だ。


そ、それもそうだよね…。


いきなり謝っても、何がなんだか分からないと思うし…。


私は、あの日のことを打ち明けるべく、ゆっくりと顔を上げた。



「日向君が家まで送ってくれた時…。私…お母さんに、日向君のこと…“同じクラスの男の子”“それだけ”って、言ったでしょ?」


「あ、ああ…。」


「実は、あの時…日向君と一緒にいるところを、お母さんに突然見られたから、ビックリしたのと、恥ずかしいのとで、思ってもないこと…言っちゃったの…。」


「えっ…」


瞬きをする日向君。


心臓の音が、ドキドキからバクバクへと変わる。


緊張する心を奮い立たせながら、大きく息を吸った。



「本当はね、私にとって日向君は、とっ…とても大切で、特別な男の子だよ…。」



< 260 / 305 >

この作品をシェア

pagetop