君に夢中で恋してる*
あ……。
や、やだ…。
今の表情、日向君に見られたくない…。
「あ、あの…それじゃあ、またね…。」
震えそうになる声を振り絞って言った私は、日向君たちから離れて廊下へと飛び出す。
早く帰ろう……。
零れそうになった涙を拭いて、足早に歩き始めた時…。
「椎名、待って!」
後ろから日向君の声が聞こえたかと思うと、次の瞬間…パシッと手首を掴まれる。
振り向くと、戸惑った表情で私を見つめる日向君の姿が映った。
「日向君、離してっ…。」
「離さない…。椎名がそんな辛そうな表情してんのに、この手を離すわけないだろ…。」
手首を掴む力が少し強くなる。
日向君の真っ直ぐな視線から目を逸らすと、廊下にいる生徒たちの視線が、私たちに注がれていて…
教室の入り口からも、何事だろう…と言わんばかりの表情でこちらを見ている生徒が目に飛び込んできた。