君に夢中で恋してる*

やって来たのは、家庭科室の隣にある空き教室。


校舎3階の一番端にある教室ということもあり、この辺りに普段は殆ど人が来ない。


まさに“静かな場所”だ。


ここ、家庭科室での授業の時に、チラッと見かけて気になってたんだよね…。


日当たりも良くて明るい感じだし、落ち着けそう…。

ゆっくり扉を開けて中に入る。


閉めきっていた窓をいくつか開けると、フワッと心地よい風が吹いてきた。


涼しくて気持ちいい…。


窓際の適当な机にお弁当箱を置いて、外の景色をグルリと見回した。


あっ…。


校門から昇降口まで続く桜並木、ここから見えるんだ…。


夏の日差しを浴びて、緑色の葉が鮮やかに揺れている。


入学式の日は、あそこの桜が満開だったんだよね…。


頭の中に、日向君のキラキラした笑顔が浮かぶ。


私、あの場所で…生まれて初めて恋したんだ…。



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