君に夢中で恋してる*
「おい、夏綺!これじゃあ、中の様子が見えないんだけど!」
俺の体の横から顔を出して、なんとか捜そうとする碧。
その姿に苦笑した。
「見えなくていい。捜すだけ無駄。もう椎名、帰ったみたいだし。」
「えっ、マジかよ。」
「ああ。」
正確に言えば、帰ったわけじゃなくて、家庭科室の隣の空き教室に行ってるわけだけど…
コイツに、そんなこと…絶対に言いたくねぇ。
「なんだ、帰っちゃったのか…星愛ちゃん。それなら仕方ない、またの機会だな。」
碧は、ガクッと肩を落とす。
また見に来るのかよ、と心の中で思いながら、俺は碧の傍から離れた。
「じゃあ、俺…急いでるから。またな。」
「えっ、夏綺!」
碧の呼びとめる声を無視して、スタスタと足早に歩き出した。