君に夢中で恋してる*

「おい、夏綺!これじゃあ、中の様子が見えないんだけど!」


俺の体の横から顔を出して、なんとか捜そうとする碧。


その姿に苦笑した。


「見えなくていい。捜すだけ無駄。もう椎名、帰ったみたいだし。」


「えっ、マジかよ。」


「ああ。」


正確に言えば、帰ったわけじゃなくて、家庭科室の隣の空き教室に行ってるわけだけど…


コイツに、そんなこと…絶対に言いたくねぇ。



「なんだ、帰っちゃったのか…星愛ちゃん。それなら仕方ない、またの機会だな。」


碧は、ガクッと肩を落とす。


また見に来るのかよ、と心の中で思いながら、俺は碧の傍から離れた。


「じゃあ、俺…急いでるから。またな。」


「えっ、夏綺!」


碧の呼びとめる声を無視して、スタスタと足早に歩き出した。



< 91 / 305 >

この作品をシェア

pagetop